子宝企業の出産や子育ての支援策

経営

前回、社員の子供の数が多い会社は「いい社風」。つまり、会社の中にいい風が吹いているという特長があることを述べた。

もう1つの共通的特長は、出産や子育てのための直接・間接を問わず、支援制度が充実している点である。しかも単に制度が充実しているというだけではなく、心安らぐ内容の制度がちりばめられ、しかもそれらが気兼ねなく利活用されているという点である。

先般、大企業・中小企業を含め、全国の約1,000社に対し、出産や子育てに関するウェブ調査を実施したが、それによると、回答企業1,000社の内33.4%。つまり三分の一の企業は、法定福利以外は社員の出産や子育てに対し何も実施していなかったのである。

また実施している内容で、最も多かったのは「短時間勤務制度」の41.1%。

以下、
「育児や介護のための法定以上の長期間休暇」の30.2%
「フレキシブルな勤務制度」の27.9%
「特別休暇制度」の17.5%
「時間休暇制度」の14.5%
「残業や会議の免除制度」の11.3%

そして「在宅勤務制度」の10.4%等と続いていた。

つまり、社員や家族の出産や子育てを支援する制度を設けている会社は、未だ極めて少ないのである。多くの子育て中の社員や家族が願う「時間単位の有給休暇」で言えば、その導入企業は僅か14.5%。7社に1社程度しかないのである。

こういう実態では、社員や家族が出産や子育てをすることは容易なことではない。それどころか、社員や家族は、自身の命と生活を犠牲にしなければ、出産や子育てに多くの時間を費やすことができないのである。

しかしながら、社員の子供の数が多い会社においては、この面でも大きく異なっている。

上述した「時間単位の有給休暇制度」は、一般企業が14.5%と低かったが、子供の数が多い50社では大半の企業が導入していた。

こうしたことは、一般企業で僅か10%程度に過ぎない「在宅勤務」、「短時間勤務制度」でも同様で、子供の数が多い50社においては、50%以上の企業で導入されていた。

今回訪問調査した、とりわけ社員の子供の数が多かった会社の社長さんが「法定だからとか、経費の損金算入ができるからなどで制度の導入の是非など判断していません。その制度や運用が社員や家族のために、真になるかならないかで決めています・・・」と言ったのが印象的である。

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筆者紹介

坂本光司

アタックスグループ 顧問
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長  坂本 光司(さかもとこうじ)
1947年 静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。

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