労働力人口の大幅減少にどう対応するか

経営

将来推計人口によれば、2015年に7,700万人であった生産年齢人口(15歳~64歳)は、10年後の2025年には7,100万人となり、そして20年後の2035年には6,300万人となる。

つまり20年後は、生産活動に必要不可欠な人々が1,400万人、率にして18%もの大幅な減少である。

そればかりか、働き方改革でも議論されているが、例えば、所定外労働時間(残業時間)を、現在の月平均13時間から10時間にし、また有給休暇取得日数を現在の9日から14日に5日間増加したならば、新たに必要になる労働力は両方合わせて160万人となる。

さらに言えば、経済社会のサービス化は時代の流れであり、今後なお一層進行するが、こと労働生産性という意味では、サービス産業の生産性は、モノづくり産業の60%程度に過ぎない。

つまり、今日のGDP確保のためには、サービス産業の生産性向上はもとよりであるが、サービス産業への大幅な労働力投下が必要となる。
少なく見積もっても今後、好不況を問わず、新たにおよそ2,000万人の労働力の確保が必要となる。

もとより、国際競争の激化に伴う企業再編や自動車のEV車化をはじめとした、ものづくり産業の部品の大幅な減少等による数百万人分の雇用の喪失や、超長期的にはAI(人工知能)の進化・普及により、現在2,000種といわれる人間の業務の50%が、ロボットに代替され雇用が奪われるといった衝撃的な試算もあり、必要労働力は、職種によっては大幅に減少することも確かである。

ともあれ、いずれにしても、これからの時代は人財の奪い合い競争は必至である。

その意味では、今後、いかにして、国として地域として、また企業として、着実に進行する生産年齢人口(労働力人口)の大幅減少に効果的に対処するかは極めて重要である。

その方策は多々あるが、最も有効と思われるのは「高齢者」と「女性」の活躍対策である。

というのは、現在65歳以上の労働力率は、男性が31%、女性が15%と、60歳から64歳の男性79%、女性51%と比較し、男女とも大幅に低いからである。

高齢化に伴う肉体的衰えもあるが、それはほんの一部の人々であり、最大の理由は、企業の定年制や厚生年金の受給年齢の問題、さらには企業の高齢者を活躍させるという思いが総じて低いからである。

ちなみに、65歳から79歳の人々の労働力率を男女とも65%として試算すると、労働力人口は男女合わせ750万人の増加となる。

もう1つの女性の個性に合わせた多様な活躍の場の創造も極めて重要である。

というのは、25歳から64歳の女性の労働力率は、男性のそれを大幅に下回っているが、抜本的な対策を講じ、例えば、25歳から64歳の女性の労働力率を、全て男性のそれと同率としたならば、この年齢層の女性の労働力人口はなんと750万人もの増加となる。

つまり2つの対策を合わせ1.500万人の労働力人口の増加である。
将来、人財不足倒産という哀れな幕切れをしないキーワードは、高齢者と女性の活躍である。

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筆者紹介

坂本光司

アタックスグループ 顧問
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長  坂本 光司(さかもとこうじ)
1947年 静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。

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