広島のお多福グループに学ぶ

経営

先般、社会人大学院生ら約30名と一緒に広島市に本社のある「オタフクソース」という社名の中堅企業を訪問した。「オタフクソース」は「お好みフーズ」「お多福醸造」「ユニオンソース」等からなる「お多福グループ」の中核的企業で、お好みソース、焼きそばソース、たこ焼きソース等、様々なソースやたれの製造販売をする全国有数の企業である。

その業績もすこぶる順調で、例えば売上高の推移を見ても過去20年間、ほぼ右肩上がり、この10年間で見ても、グループの売上高は、177億円から224億円と快進撃である。そればかりか、社員の数も既に20年以上、順調の増加しており、この10年間で見ても402名から572名に増員している。まさに今わが国が最も必要としている地域活性化貢献企業といえる。

多くの企業が、この間、好・不況や円高・円安といった環境変化に一喜一憂していたが、当社は「問題は外…」という環境依存型企業とは異なり、正に自らの力で、この間の景気を創造してきたのである。当社のこの間の快進撃の要因は多々あるが、ここでは2点に絞り紹介する。

第1点は、創業以来、本物志向の新商品開発に愚直一途に注力してきたからといえる。

当社の創業は1938年であるが、この約80年間、下請型経営を嫌い、新商品開発にはあくなき挑戦をし続けてきた。事実、当グループは創業当初、酢のメーカーとしてスタートしているが、食の洋風化・多様化・本物化を見越すとともに、顧客のニーズとウォンツに常に真摯に耳を傾け、次から次に新商品を世に創造提案している。

加えて言えば、単に売れればいいという商品ではなく常に「身体に悪いもの、安全・安心が疑わしきものは一切創らない・売らない…」という信念で、本物にこだわる新商品開発に尽力してきた。

こうした努力の結果、これまでに創造提案した独自商品で、現在も販売されている商品アイテム数はなんと2,336点、近年の年間新商品開発アイテムは174点に及ぶ。

第2点は、業績重視ではなく、社員の成長重視・幸せ重視の経営の徹底である。

このことは当グループの経営理念・企業理念を見ればよくわかる。

当グループが高らかに掲げる「私たちの誓い」には、「お客様への誓い」「社員への誓い」お取引先への誓い」「地域社会への誓い」そして「地球環境への誓い」の5つの誓いが明文化されている。「社員への誓い」の内容は「社員が活き活きと働くために環境整備と人財育成を推進する…」と社員への約束を明記している。

しかも、単に明記してあるだけでなく、そのために実践されている「家族団らんを応援する制度」や「仕事と子育ての両立を支援する制度」等を見ても、その精度に魂が入っており、当グループの本気度がわかる。こうした社員の幸せ重視の経営姿勢が上述した活発な新商品開発に繋がっていることは容易に想像できる。

アタックスグループでは、1社でも多くの「強くて愛される会社」を増やすことを目指し、毎月、優良企業の視察ツアーを開催しています。
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筆者紹介

坂本光司

アタックスグループ 顧問
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長  坂本 光司(さかもとこうじ)
1947年 静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。

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