フェスティーナレンテ~就労移行支援施設のモデル

経営

「障がい者雇用促進法」が改正され、本年4月から法定雇用率は、これまでの1.8%から2.0%に引き上げられ、対象企業もこれまでの56人以上が50人以上企業に引き下げられた。

加えて言えば、未達成企業に対する官公需の入札を制限するといった動きも自治体レベルではある。こうなると、企業は好むと好まざるとにかかわらず、障がい者雇用に積極的に取り組まざるを得ない。

こうした動きは当然と言える。というのは、現在、わが国には障害者が約720万人、人口比では約6%いるが、障がい者雇用の平均は1.7%、未達成企業がなんと55%も存在しているからである。

しかしながら、近年、多くの企業は企業の社会的責任の高まりもあり、障がい者雇用を増加させようと気持ちは高まっているものの、不安も依然横たわり躊躇している企業も少なからず存在している。その最大の原因は、多くの企業関係者は、障がい者が就労する仕事は単純作業等に限られていると思っているからである。

こうした企業や福祉関係者に夢と勇気を与えてくれると思われる企業が、今回紹介する「フェスティーナレンテ株式会社」という社名の中小企業である。当社の場所は都内池袋から東武東上線に乗車し、約20分ほど行った成増駅近くである。

当社の主事業は「障がい者の就労移行支援施設」の運営である。つまり、特別支援学校を卒業したが就職できなかった障がい者や、一般企業で従業員として働いていたが、何らかの原因で障がい者となり、離職した人々の再復帰に向けての就労訓練をする施設である。

こうした就労移行支援を専門とする会社は全国各地に多々あるが、当社の就労移行を支援するための基本的考え方や、その訓練内容はモデルといっても過言ではない。

というのは6か月程度訓練した後の民間企業への就職率は、一般的に10%程度以下と言われているが、当社のそれはなんと50%前後以上に達しているからである。

また多くの障がい者の一般企業での仕事は、部品の組み立てやラベル張り・清掃・洗濯業務等の軽作業であるが、当社の訓練生の大半は、その後一般企業の事務員や事務補助、あるいはIT関連の仕事についているからである。

当社の評価が高い最大の理由は、当社を創業した佐藤悟氏の施設運営に対する強い思いがあったからである。ちなみの佐藤氏の娘さんは生まれつき重度の知的障がい者と言う。重度の知的障がい者でも、工場の軽作業だけでなく、事務作業やIT職場での就労が可能であるということを証明したかったからと言う。

筆者らが訪問した当日も32人の訓練生がスーツ姿で普通の会社のような明るい事務所で、マナー教育等社会人基礎力を高めるための訓練が行われていた。ちなみに筆者らに湯茶の接待を見事にしてくれた男女も訓練生であった。

この施設を見れば、必ずや企業はもとより福祉関係者も、障がい者の就労に対する理解と関心が飛躍的に高まるに違いない。多くの読者に訪ねて欲しい。

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筆者紹介

坂本光司

アタックスグループ 顧問
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長  坂本 光司(さかもとこうじ)
1947年 静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。

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