人口わずか15,000人の町に年間35万人を集める -株式会社長坂養蜂場

経営

西浦道明のメルマガ 2020年12月

2014年から、当メルマガでは自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している中堅中小企業をご紹介している。

連載76回目の今回は、静岡県浜松市で、はちみつの生産・加工・販売、はちみつ加工食品や健康食品、はちみつ化粧品の開発・加工・販売などを行う株式会社長坂養蜂場(以下、N社)の池クジラぶりを見ていきたい。

N社は、現社長の長坂善人氏(以下、N氏)の祖父で創業者の喜平氏が、1935年に自身の体質の弱さを蜂蜜の栄養によって回復したことをきっかけに、他の人たちの健康も願って創業した。

2013年以降は、その思いを受け継いだ若き3代目の善人社長と弟の恭輔専務が2代目の父から後継し、人口わずか15,000人の町で、年間35万人を集めるはちみつ専門店になっている。

N氏は、社長に就任した際、売り上げという結果を求めすぎるあまり、社員への思いをないがしろにし、社員を疲弊させてしまった苦い経験がある。

「社員第一主義の考えを持たず、ひたすら顧客第一主義で働いた結果、温かみがなくなり、何のために仕事をやっているのかわからなくなってしまった」 と、自身がやってきたことが間違っていたことに気づき、自分たちが本当に働く仲間と何をやりたいのかを真剣に見つめ直し、「ぬくもりある会社をつくりましょう」という経営理念と、「BEE HAPPY!」というミッションにたどり着いた。

それ以降、毎年5アイテム以上の、他社にはない独自性のある新商品を販売している。

新商品開発方針として、(1)「ミツバチの恵みを通じてお客様の美と健康づくりの役立ちをし、ぬくもりあふれる暮らしをお届けします」という「BEE HAPPY!」のミッションから外れていないか、(2) 開発している商品が、お客様の暮らしにとって本当にお役に立つか、(3) この商品に出会えてよかったと喜んでいただけるかを重視している。

その結果、はちみつを嗜好品とはせず、また、テクニックやブームに走らず、心からお客様にお届けしたい商品づくりを積み重ねてきた。

何より、上記開発方針に込められた想いを、新商品にどんどん注ぎ込んでいる。

はちみつに秘められた力に着目し、食品・健康食品・化粧品などを次々に開発。
今現在、年間100種類以上の商品を取り扱っている。

愛用者20万人以上を超える「二代目の蜂蜜」、ハニーオブザイヤー優秀賞を受賞した「三ヶ日みかん蜂蜜」など、数々の、他社にはないオリジナルヒット商品を保有しているのだ。

N社は、2001年に浜名湖湖畔沿いに店舗を移転。

訪れた方にも自然の営みを感じてもらえるようミツバチ観賞ができる中庭を設けるなど、緑溢れる店舗になった。

今ではわずか20坪の小さなお店に年間35万人を超えるお客様が訪れている。

またN社の通信販売を利用する会員も5万人を超え、そのリピート率も極めて高い。

さらに、店舗や通信販売を通してお客様から寄せられる声を、数多くの新商品開発に反映させている。

N社は、地域にもお客様にも、そして社員にも、「ぬくもり」あふれる取り組みを通して高い評価を得てきた。

N社は、はちみつ本来の力を注ぎ込んだ新商品を次々と開発して、人口わずか15,000人の町に年間35万人を集める、「はちみつ専門店」という市場(池)のクジラである。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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