日本最大級の炭化プラント -出雲カーボン株式会社

経営

西浦道明のメルマガ 2020年9月

2014年から、当メルマガでは自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している中堅中小企業をご紹介している。

連載73回目の今回は、島根県出雲市で、調湿木炭「炭八」の製造販売を行う【出雲屋炭八】出雲カーボン株式会社(以下、I社)の池クジラぶりを見ていきたい。

現社長の石飛裕司氏(以下、I氏)は、1991年出雲土建株式会社の社長に就任したとき、これからは公共工事が減り、土木と建築だけでは経営が厳しくなると、将来の建設業の先細りを見通した。

そこで、島根県の家屋の解体に伴う良質な木材や、工場などから発生する木製パレットを再利用して、木炭としてリサイクルする事業を立ち上げると決めた。

2001年、関連会社I社を設立し、日本最大級の炭化プラントを建設した。

調湿木炭の「炭八」は、取替も不要で半永久的な効果を発揮し、その調湿や防音効果にかかる特許を2件取得するなど独自性がある。

今や年間150万袋以上を生産し、出雲市内では、8世帯に1世帯が炭八によるリフォームを施工するなど人気も高い。

近年では販路は県外が90%に拡大している。

さらに、島根大学医学部との産学連携により開発した賃貸マンション「炭の家」の建築工事の設計・施工に力を入れており、この15年間に出雲市内で43棟708戸の引渡し実績がある。

さて、I社の調湿木炭事業は何が池クジラなのだろうか。

木造住宅の床下や室内を調湿木炭によって除湿し、家を長持ちさせ、安全・安心・快適な生活を提供することがI社の使命である。

この使命を支える技術軸の一つ目は、産学連携により開発された日本で唯一の調湿木炭にある。

産学連携で実験したところ、約1ヶ月で床下の湿度が低下し始め、床下の木材の表面も乾き始めた。

そして3年後には、新築時と同レベルの木材の水分含有率、約18%にまで低下した。

水分含有率が20%を超えるとシロアリなどが発生しやすくなるが、炭八はこれを防ぐことができる。

また、湿度が抑えられることにより、ダニ・カビの発生も防ぐことができるため、アトピー性皮膚炎や喘息の原因物質を取り除くことができる。

技術軸の二つ目は、素材へのこだわりである。

有名な備長炭は、広葉樹を素材としているが、炭八は針葉樹を素材にしている。

針葉樹は、地面から水を吸い上げる仮道管が広葉樹の道管より太いため、焼き上げて木炭となった後も隙間が多く、湿気を取り込む孔が広い。

そのため、炭八は他の木炭よりも短時間で吸湿でき、空気が乾燥している時には素早く放湿も可能となる。

技術軸の三つ目は、生産方式へのこだわりである。

I社では、調湿力や吸着力を高めるため、日本国内最大規模の反復揺動炉焼成で約800℃という高温で焼く。

高温で炭化された木炭は、非常に小さな穴がたくさん空く。

この穴の大きさと容積が除湿する力やニオイを取る力のもととなる。

I社は、木造住宅の床下・天井・室内での調湿木炭による除湿を通し、居住者への安全・安心・快適な生活の提供という市場(池)をパイオニアとして創造し、今やその池のクジラになっている。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。

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