強くてやさしいランドセル会社 -株式会社協和

経営

西浦道明のメルマガ 2020年8月

2014年から、当メルマガでは自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している中堅中小企業をご紹介している。

連載72回目の今回は、東京都千代田区でランドセルを中心に、様々なカバンの企画・製造・販売を行う株式会社協和(以下、K社)の池クジラぶりを見ていきたい。

K社は、1948年、現社長の若松秀夫氏(以下、W氏)の父の若松種夫氏が、東京浅草で創業した。

K社の社名の由来は、創業者が太平洋戦争で南方戦線を転戦し、一緒にいた4,000人の部隊が40人に減って死地をさまよった際の教訓である。

そこから生還できたのは、仲間と食べ物を分け合った人間だけだった。

そうした壮絶な経験から、「どんなときでも仲間や同僚と強調して助け合う。平和を大切にする」との人生訓を得て、「協和」と名付けた。

K社が主力商品としているランドセル業界は、少子化などの影響から、最盛期にはランドセルメーカーが400社弱あったのが10分の1に減少した。

競合他社が、ランドセルに不必要な機能をつけたりキャラクターを使ったりして単価をつり上げ、売り上げを確保している中、K社は、徹底して利用者の立場に立ち、子どもたちに余計な優越感や劣等感を与えず、子どもたちの格差を助長しないとの信念から、ランドセルの販売価格を最高6万円までとしてきた。

K社も、初めから利用者目線を持っていたわけではない。

昔は、ランドセル生産量で日本一になるなど、量を追った時代があった。

当時、販売も販売量で最大手の通販会社に卸していたが、相手の言いなりになり、仕様も細かい点で妥協を求められることが多かった。

こんなことで本当に子どもに向き合ったランドセルを作れているのか。

使う側の視点で考えると、これではダメだと悟った。

そもそも、「企業として何を目指すのか」を考えたとき、量を追って同業他社と業界1位を競うのは、金輪際止めようとの結論にたどり着いた。

K社は、利用者視点からの商品開発に挑戦してきた。

K社の名が広まるきっかけとなったのは、1967年に業界初で人工皮革「クラリーノ」を採用したことである。

耐久性や撥水性などでランドセルには一番相応しく、今後、外せない素材と感じた。

そこで、それまではチップボールを使っていた芯材に発泡材を採用。

鋼鉄製の留め金具をアルミ製に変えたり、形状を工夫してグラム単位での軽量化に取り組んだ結果、重さ890gと業界トップクラスの軽量化を実現させた。

また、国内での一貫製造販売にこだわってきた。

ランドセルは「日本の伝統文化」という自負から、自社工場で開発・生産・販売している。

新たな機能を導入する際は、千葉にある工場近くの小学校の児童にモニターになってもらい、本当に使いやすいと感じてくれるかどうか、入念に調査してきた。

この結果、高品質と使いやすさを両立させている。

K社は、被災地のお子さん、障がいを持つお子さん、生活困窮家庭のお子さんを含め、あらゆる子どもの立場に立つ、「強くてやさしいランドセル会社」として高い評価を得ている。

今や「子どもが本当に使いたいランドセル」市場(池)のクジラである。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ代表パートナー
公認会計士 税理士西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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