これまでなかった合成樹脂加工製品 -萩原工業株式会社

経営

西浦道明のメルマガ 2018年5月

2014年から当メルマガでは、自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している中堅中小企業をご紹介している。

連載45回目の今回は、岡山県倉敷市で合成樹脂繊維を用いた製品と、その技術を応用した産業機械の、製造・販売を行う、萩原工業株式会社以下、H社)の池クジラぶりを見ていきたい。

H社は、1962年11月、現代表取締役会長の萩原邦章氏(以下、H氏)の父親、萩原賦一氏が、花ござ用のたて糸を合成樹脂で製造するために設立した。

今日、H社を支えている代表製品はブルーシートである。

この青色の合成樹脂シートは、元々は、水や埃などを防ぐ用途に作られ、主に、工事現場・災害現場などで使われる。身近では花見や運動会の際に敷物として使われている。

H社は、これを日本で初めて製造した企業であり、現在、国内市場規模80~100億円の内、シェア3割とトップであり、国産に限ればシェア9割を占めている。

では、H社は、なぜ、このような高いシェアを獲得することができているのだろうか。

理由は大きく3点ある。

まず1つ目は、「おもしれえ すぐやってみゅう」という創業の精神が根づいていることだ。

これにより、「たかがブルーシート、されどブルーシート」と人を唸らせるだけの、進取の精神に基づく、高い技術力が育っていることだ。

2つ目は、H社独自の生産体制である。

高シェアを誇るシートの製造に関しては、材料となる糸から最終製品のシートまで一貫生産を行う国内唯一のメーカーであると同時に、工場内の製造設備を自社開発してきた。

同社には総売上の4分の3を占める合成樹脂事業部と、総売上の4分の1を占める産業機械の製造・販売部門(エンジニアリング事業部)がある。

この2つはユーザーとメーカーの関係にもあり、合成樹脂事業部は、エンジニアリング事業部の先端技術を活用することで、他社に先駆け、狙ったニッチ市場に対して新たな合成樹脂製品を投入できる。

3つ目は、市場の選択である。

H社がターゲットとする市場は、建築・土木、産業並びに農業用資材が中心のため、一見、成長性に乏しい分野に見える。

しかし、新規参入者がいない非価格競争が可能なニッチ市場を選べば、トップシェアを維持して高収益を獲得できる。

したがって、工事現場・災害現場などのように高い機能を求める市場では、価格が一般製品の数倍であっても、H社が選ばれている。

価格ではなく、品質で勝負できる中高級品市場だけを選んでいるのだ。

H社には、ブルーシートの他に、トップシェアを持つ製品として、テニスコート向け人工芝用パイルヤーン、土のう、カーペット基布、コンクリート補強繊維など、多数のものがある。

現在の商品アイテム数は2,000~3,000種類にも上る。

H社は、顧客ニーズに基づいた中核技術を柱に、連続的改良・開発を推進する新商品開発力と、その新製造設備の自社での開発力により、お客様から高く評価されている。

H社は、これまで業界に存在しなかった「使う場所や用途に合わせ、様々な色や厚み、糸の素材を使い分けた合成樹脂加工製品」を販売する市場(池)のクジラになった。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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