高齢者コミュニティを創る -社会福祉法人合掌苑

経営

西浦道明のメルマガ 2018年1月

2014年から当メルマガでは、自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している中堅中小企業をご紹介している。

連載41回目の今回は、東京都町田市で、高齢者施設等の運営を行う、社会福祉法人合掌苑(以下、G法人)の池クジラぶりを見ていきたい。

G法人は、創業者の市原秀翁氏が1953年、第一種社会福祉事業の認可を受け、1960年に町田市で事業を開始したのが始まり。

市原氏は、終戦後、タイで1年程の留置生活を経て復員。

その後、故郷の岐阜県で出家し、東京都中野区の寺で修業を積んだ僧侶である。

仏教の慈悲の精神から、市原氏は高齢者・障がい者の権利と尊厳を守ることに生涯をかけた。

G法人の「人は尊厳を持ち、権利として生きる」という基本理念は、そうした氏の人生観から生まれたものだ。

その理念は、現在の理事長である森一成氏(以下、M氏)にも脈々と受け継がれている。

M氏は初めから福祉に関わっていた訳ではなく、IT企業でプログラマーをしていた。

その後、縁あってG法人に入ったが、M氏の一般企業での経験が、社会福祉法人の業界常識打破に大いに役立った。

すなわち、それまでの業界では考えられてなかった職員の働き方を徹底的に見直したのだ。

その結果、医療・福祉業界の14.8%という高い離職率を、7.9%にまで引き下げることができた。

M氏の改革の1つ目は、介護業界の人手不足の解消だった。

日勤・夜勤のローテーションを廃止した。

夜間は専従職員を雇用。

日勤では、入浴、排せつなど重労働のケアがあり体力が必要だが、夜間は入居者が就寝中で重労働が少ないため、体力はなくてもいいベテランの職員を採用した。

2つ目が、無線LAN環境を導入し、タブレット端末を活用してのコミュニケーションの充実である。

これにより、お客様の変化をリアルタイムで情報共有し、チームプレーが可能になった。

また、職員全員にインカム(移動スタッフへ一斉指令ができる構内電話携帯無線機)を装着させて仲間への応援要請を可能とさせ、介護職員のストレスを軽減、お客様に関わる時間を増やした。

更には、シフト制や三つの離れた拠点のため困難だった個人面談が、スカイプを活用することで全職員に毎月1回実施できるようになり、経営者・管理者と職員とのコミュニケーションが大いに活性化した。

更にM氏は、利用者の満足度向上にも取り組んでいる。

介護を必要としていない方が入居するマンションタイプのフロア。海外の先進モデルを導入した認知症専門フロア。医療依存度が高い方向けのフロア等、入居者の状態に合わせ最適なフロアに移動して住み続けられ、ケアに一貫性のある体制にした。

よって、最後の「看取り」の瞬間まで尊厳を守ることができる。

看取り率は、一般に高齢者施設では20%を下回っているにも拘らず、G法人では95%を超えている。更には、単に看取るだけではなく、施設内のホールで葬儀まで執り行うことができる。

G法人は、職員の離職率が高い介護現場の働き方を改善して働きがいを高めてきた。

その結果、職員からの企画提案が増え、高齢者アパートの運営から最期を迎える入居者の看取り、葬儀まで行い、介護者が他に移る必要のない、継続的なケアを受けられる高齢者コミュニティという池を東京都町田市に創ることができ、その池のクジラとなった。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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