高品質なめっき加工処理 -株式会社清川メッキ工業

経営

西浦道明のメルマガ 2016年9月

2014年から当メルマガでは、自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している中堅中小企業をご紹介している。

連載25回目の今回は、福井県で表面処理、各種電気めっき、化成皮膜処理などのめっき加工を行う株式会社清川メッキ工業(以下、K社)の池クジラぶりを見ていきたい。

1963年3月、現会長の清川忠氏(以下、K氏)は、事故に遭遇したのを機に起業を決意した。

その際、電話帳で、福井市内で企業数の一番少ない業種を調べたところ、めっき業だということを知り、3年間のめっき工場での修業の後、夫婦2人でK社を創業した。

創業当初、バンパー等の自動車関係の再生部品のめっき加工やオートバイの車輪を支えるリムのめっき加工を主な仕事とし、1970年代半ばには、バイクのホイルとリム加工で国内シェア70%となった。

しかし新技術の台頭もあり、リム加工の需要減退が明らかになったことから、K氏は新分野への進出を決意した。

たまたま電子部品のめっき加工が今後伸びると知り、バレル電気めっきに挑戦することにしたが、これがK社の転機となった。

折りしも、ある大手メーカーから「電子基盤に使うチップ抵抗器にめっきはできますか?」との依頼が舞い込んだ。

まだ新分野へ挑戦途上であったが、K氏は、その依頼に対して「できます。やらせてください」と即答した。

K氏は、その新たな技術開発のために、1982年、社内に化学技術研究所を開設させた。

そこで、めっき加工に必要とされる分析、解析、測定等の各種装置を揃え、めっき加工に関する研究体制を整えた。

今現在、全社員の7%が分析解析要員として研究所に所属している。

さらに、研究開発を進めるための人材育成に積極的に取り組んだ。

中堅社員が講師となり品質道場を開講。

めっき技術の標準化・マニュアル化に取り組み、職人技の言語化を成功させた。

また、めっき技能士などの国家資格を取得できる体制を整え、社員の約70%が取得するなど社員教育とめっき技術の安定化を図った。

K氏の長男の肇氏(現社長)が、戻ってきたのを機に、K社は技術開発のため、自社で研究開発するだけでなく、産学連携にも積極的に取り組んだ。

分析装置は高価であり、簡単に中小企業が調達できるものではなく、地元の大学や工業技術センターなどに足を運び、共同研究を進めた。

この共同研究から生まれたのが、独自のめっき加工処理方法である「ナノめっき」(10億分の1メートル単位のめっき加工)である。

年間約1千億個に及ぶ「ナノめっき」した部品の不良品はほぼゼロとなっている。

K社には、その技術の高さに期待して、日本全国から、難易度が極めて高いめっき加工処理の依頼が寄せられている。

K氏は、「技術開発は常に時代を先取りして先行することが重要で、あきらめない『根気』と、既成概念に捉われない自由な『発想力』が最も必要」「新しいものに対応する技術を率先してやらないと、次世代の仕事が取れない」と言い、常に先を見据えた研究開発に取り組んできた。

こうしてK社は、医療分野・自動車用半導体分野へと新市場開拓を進めている。
 
K社は、これまでの常識を覆し、その高い技術力で、顧客の課題を次々と解決する新技術開発に挑戦し、他社がマネのできない製品の小型化、省資源化、省エネ化に対応できる高品質なめっき加工処理という市場(池)を創りあげ、その池クジラとなった。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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