お客様主導の葬儀社 -株式会社清月記

経営

西浦道明のメルマガ 2016年8月

2014年から当メルマガでは、自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している中堅中小企業をご紹介している。

連載24回目の今回は、仙台とその周辺で20の葬祭会館を中心に展開する株式会社清月記(以下、S社)の池クジラぶりを見ていきたい。

S社は1985年3月、菅原裕典社長(以下、S氏)が仙台市に開業した。

当時、葬儀という仕事は、「死」にまつわる仕事というだけで世間からは偏った見方をされていたが、家族を亡くした遺族から感謝される「人の最期にかかわる高貴な仕事」ということを確信し、創業を決意した。

地域最後発でスタートしたS氏は、当時の葬儀社の問題点に着目した。

1点目は、古くからの業界常識を覆し、葬祭業を普通のサービス業と捉えたことだ。

強い思いを持って事業計画を作り、銀行を駆け回り、資金を調達した。

そして、通夜式にはじまり「ここまで丁寧にやってくれる葬儀社は他にない」と言わせるまでの評判を取った。

2点目は、葬儀費用の見える化を実施したことだ。

業界は、葬儀のお客様を一見客と捉えていたが、S氏は一周忌、三回忌、七回忌、十三回忌、一七回忌と、しっかりアフターフォローすることでその家をリピーターにできると考えた。

一世帯につき平均17年に1回は葬儀があると考えたのだ。

そこでS氏は、見積書を作成する明朗会計をスタートさせ、遺族が、自分自身で葬儀見積もりをシミュレーションできる仕組みを用意した。

これにより会計が不明朗な業界常識を覆したため、多くのお客様がS社のファンになったのは当然だった。

3点目は、当時業界では誰もやっていなかった営業活動を実施したことだ。

S氏は、新聞の訃報広告先にアプローチし、年賀欠礼ハガキを受注するアイデアを思いつき、営業を始めた。

地域の住宅を戸別訪問するとともに、チラシのポスティングサービスなども始めた。

お客様との接点を持つため、自社にて仏具店もオープンさせた。

4点目は、S氏が、葬祭会館を建設するにあたり、土地は20年の賃貸借契約としたことだ。

その上で、会館の耐用年数を20年とし、20年間で葬儀会館コストを回収し切る計算式を打ち立て、新しい会館を建設して行った。

これにより、「土地を持たざる経営」を実現し、過大バランスシートを回避して、ビジネススピードを圧倒的に速め、成長スピードを高めることに成功した。

今や事業規模、売上では北関東以北でトップクラスの葬儀社にまで成長し、業者主導ではない、お客様主導の葬儀社という、従来なかった市場(池)を創りあげ、その池クジラとなっている。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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