新用途・新市場を切り拓く -昭和測器株式会社

経営

西浦道明のメルマガ 2016年3月

2014年から、当メルマガでは、自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を上げている中堅中小企業をご紹介している。

連載19回目の今回は、「振動計なら昭和測器」と言われるほど高い技術力を誇る「振動計の専門メーカー」昭和測器株式会社(以下、S社)の池クジラぶりを見ていきたい。

S社は1970年に、創業者で現会長の鵜飼俊吾氏(以下、U氏)が振動計の専門メーカーとして、昭和測器株式会社を設立したのが始まりである。

U氏がこの分野に足を踏み入れたきっかけは、振動計測装置が、かつて経験した警報装置の通信機能の知識と、振動試験機メーカーに勤務していた実兄から得た振動知識の両方の利点を合わせ持っていたからである。

安心・安全のためには、様々な分野で揺れ(振動)は大敵であり、振動計測技術は、多方面の業界で広く使われている。

したがって振動計測技術に、成長余地はあったが、それぞれの市場があまりにも小さいため、誰も参入しようとしなかった。

すなわち、大企業が自社で基礎から研究開発しても、研究開発費をカバーするだけの需要が、社会にはなかった。

このことに気づいたU氏は、この分野の専門メーカーにチャンスありと確信し、誰もマネできない最先端技術で新製品を作り出し、お客様が要望する製品の開発に対応するどこにも負けない力を身につけようと決断した。

その後S社は、自社開発製品としては、ロングセラーの携帯振動計を開発。

また、お客様への対応としては、自動車メーカーの走行実験用振動計、微小振動計測器、超微小振動計測器を開発。

また対応する業界として、自動車メーカー、大手製鉄所、重電機メーカー、エレクトロメーカー、電力発電所へと展開し、万遍なくすべての市場からの、様々な難しい要望に応えられる高い技術力と顧客対応力を持つ、振動計測技術分野において圧倒的なトップ企業になっている。

最近では、次世代電子顕微鏡向けの超高感度振動計、人工衛星用の地上加振試験用計測システム、エレベーター振動分析装置、海底地質調査用地震センサー等々を開発している。
 
S社には、自社開発製品の売上構成比を50%にするという目標がある。

この意味は、お客様からの特注要求製品とそこからのヒントを基に、売上の50%は将来の自社開発製品を開発しようということである。

残り50%は、カタログ製品(スタンダード品)の売上であり、既存製品で売上の最低限を確保しようとの考えだ。

このため、お客様がこの先欲しいと思われている情報を営業がキャッチして、開発製造に提案する。

その意見を基に一歩先を行く新製品を開発し、すみやかにお客様に提案している。

このベースには、営業と開発製造の積極的な意見交換がある。

このように、営業と開発製造が一体となって新製品開発に取り組めるのには理由がある。

一つは、製造・設計・開発を経験した者が営業になるというジョブ・ローテーション。

もう一つは、全顧客の社内データベースを基に、顧客ごとの生産・販売状況をリアルタイムで営業と開発製造が共有していることがある。

技術を理解している営業マンが、ITを活用して顧客対応することで、顧客および開発製造への迅速かつ的確なフィードバックが可能になるのだ。

このようにして、S社は振動計測技術を核としてその技術を活用できる数多くの新用途・新市場を切り拓き、見事に、その創りあげた数多くの小さな市場(池)の圧倒的トップ企業(クジラ)になっている。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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