非常識に対する挑戦 -株式会社坂東太郎

経営

西浦道明のメルマガ 2015年1月

昨年9月から、中小企業は、「自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、自らがその『池のクジラ』となることで高収益を生み出せる」という考え方について、事例をご紹介している。

年明け第1号となる今回は、北関東(茨城・栃木・群馬)、埼玉・千葉を中心に70を超える店舗を展開し、ローカルのファミリーレストランとして知る人ぞ知る存在の、株式会社坂東太郎(以下、B社)を取り上げる。

1975年、現社長の青谷洋治氏(以下、A社長)が創業し、現在では、非正規社員を含め社員約2,000名、売上高は76.3億円(2013年)にまで成長している。

A社長がダントツの競争力を築き上げた理由はいくつかあるが、敢えて「北関東エリアに出店地域を限定したこと」を一番に挙げたい。

北関東エリアで圧倒的なシェアを確保するため、全国展開とは全く違う、地域に根差した施策を展開したのだ。

具体的には、多数の業態・ブランドをつくり、元々人口密度の少ない、限られた商圏の中で、顧客の「その日の気分」や「家族の様々なニーズや好み」に合わせ、グループ内でお店を使い分けてもらおうと、蕎麦、海鮮、寿司、焼き肉、とんかつ・・・といった多数の業態・ブランドを用意した。

また、メニュー数を同業他社よりはるかに多くして、飽きさせない工夫をした。

肉体を使う仕事が多い地元農家の方たちがお腹を一杯食べられるよう、料理のボリュームも多くしたのだ。

更に、それぞれの店舗の周辺のお客様一人ひとりの顔と名前を覚える、高いサービスレベルを実現させる、「女将さん・花子さん制度」という施策を打った。

これらはすべて、地域を限定したことにより生まれた、業界の非常識そのものであった。

多くの一般の外食チェーン店では低価格志向が進み、安い仕入れ先が見つかれば次々と替えていくのが常識である。

しかしA社長は、「取引業者を替えない」という非常識を選び、地産地消にこだわり、安心・安全の、より良いこだわりの原材料を使うことに心血を注いできた。

多くの地元取引業者が「B社のためにいいものを作ろう」と協力してくれ、顧客の支持を得るに至った。

また2010年、これまでのレストラン業界の効率性追求という常識を覆し、一般のファミレスと比べ店舗面積を広くし、“家族の絆を深める”ために、敢えて全席個室という非効率を旨とする「家族レストラン」を開店した。

3世代で訪れる家族にしてみれば、様々な料理を注文して分けあいながら、家族団欒の場を得ることができるようになり、好評を博するに至った。

B社の施策は「業界の非常識」であるが故に差別化されており、A社長の人生は非常識に対する挑戦の連続であった。

そして、B社は、非常識だったからこそ「池のクジラ」になれた。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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