ファンづくり経営 -長野県のI社

経営

西浦道明のメルマガ 2014年7月

少し前に『変化にびくともしない「財務アタマ」経営』をかんき出版から上梓した。

この本では、自社を、嵐が来ようと槍が降ろうといかなる経営環境の下でもびくともしない会社にするために、経営者が心がけておかなければならない戦略財務的な考え方を16のポイントにまとめた。

お蔭さまで、読者から多くの嬉しい反響をいただいた。

この本の中で取り上げたが、「ファンをふやして売上を安定させなさい」という第5のポイントは、なかでも重要な考え方である。

つまり、いかなる環境下でも、お客さまが商品・製品・サービスを買う段になると、まず自社から買っていただけるため、自社だけはびくともしないと言うことである。

長野県にあるI社は「永続することこそ企業の価値」ということで企業の永続を追求しているが、このファンづくりにおいては、特別に優れた会社である。

会社をなぜ永続させようと考えるのかとI社長に問えば、人間社会における企業の真の目的は「雇用機会を創ること」であるからという。

I社は開発型企業であるが、なぜ新商品を開発し続けるのかと問えば、「ファンとなっていただけるお客さまを次々と増やしたいから」という。

そうした目的で、全従業員の1割を研究開発に充てている。

この社員たちは目先の売上や利益のためではなく、言ってみれば3-5年後の売上や利益を生み出すために常日頃から種まきをしているのだ。

では、なぜファンとなっていただけるお客さまを次々と増やそうとするのかと問えば、「それが企業永続の基であり、これによってはじめて安定雇用を維持できるから」という。

「雇用機会を創ること」が企業の真の目的という原点に戻ってくるわけだ。

それでは、どうすればファンを創ることができるかと問えば、I社長は「どんなに考えても、自分たちは正しいものづくりをしている」ことだと言う。

確かに、下記の4つの姿勢は、何があってもぶれていない。
(1)常にいい製品をつくる
(2)売れるからといってつくり過ぎず、売り過ぎない
(3)できるだけ定価販売を心がけ、値引きをしなくても買ってくださるお客さまだけに買っていただいている
(4)お客さまの立場に立ったものづくりとサービスを心がけている

I社長には、「自分たちは常に真剣勝負で事業をしている」という確信がある。

そうした自分たちのことを本当に理解していただいているお客さまだけに買っていただければいい。それがI社の仕事の流儀だと言うのだ。

そして、このお客さまたちこそ、自社の「ファン」である。

こうした話から、「無理な成長は決してしない」「敵をつくらない」「成長の種まきを怠らない」「決して目先の儲けを追わない」という、ぶれない経営哲学を、I社にも、I社長にも感じるのは、一人私だけだろうか。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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