社員第一、顧客第二の経営 -包装資材業A社

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西浦道明のメルマガ 2014年6月

「感動創造企業」というビジョンを掲げ、優れた事業戦略で起業したが、今日の高収益企業の軌道に乗れたのは、社長が、社員に対する利他主義に徹しなければならないことに心から気づき、ビジョンを「幸せ制作会社」に切り替えたことがきっかけだった。

包装資材業A社の話である。

包装資材業界の大半は、それなりの規模の企業を対象に各企業の名入り袋を取り扱っている。

個人商店のように自社ブランド名を入れない袋を扱う分野は市場全体の数%に過ぎない。

A社の創業社長B氏は、この個人商店を対象とする分野で事業をスタートさせた。

個人商店にしてみれば包装資材は大切だ。

たくさんの種類の中から商品にマッチした魅力的なものを自由に選びたい。
売れ行きが包装資材で決まる場合もあるからだ。
誰にでも同じように、簡単に綺麗に素早くラッピングできるものがいい。
大量に購入しなければならないようでは困るため小さなロットで買いたい。

そこで、A社はこうした顧客のニーズをすべて拾った。

また、企業としてできるだけ利益率を高くしたい。
かと言ってBtoBである以上、買い手は高い値段では買わない。

いかにすればローコスト化できるかと考え、問屋を中抜きにする通販に乗り出すことにした。

お客は誰でもいいというような考えでは、お客の心に響く提案などできるはずがない。
そこで、特定分野の小売業に集中特化した。

筆者は、中小企業が事業で真に成功するには、大企業が見向きもしない、小さな、自社独自の市場(自社土俵)を選択し、そこで圧倒的なトップになることしかないと考えている。

言い換えれば、「小さな池に棲むクジラ」になることが、中小企業が成功する黄金律と信じている。

包装資材業A社においては、社員たちがこの「小さな池」に自分たちのすべての力を注ぎ込み、他にはない商品を開発してくれた。

ところが、なぜか社員たちが辞めていく。
採用しても採用しても次々と辞めていくのだ。
初めのうち、悪いのは辞めて行く社員たちだと思っていた。

ところが、社員数が25人くらいのとき、30%に相当する7~8人が一時に退社した。
その中に古くからいた社員も含まれていた。

こうなっては、B社長は、自分が悪いと思わざるを得なかった。

この一件がきっかけとなり、顧客の方を向いていたビジョンを、「社員第一、顧客第二」とばかりに社員の方に向け直し、徹底的に社員を大切にするようになった。

冒頭の「幸せ制作会社」に切り替えたのはこのときである。

そして、そこからA社は大きく成長し、規模も拡大し高収益をあげるようになった。

「会社は社長の考え方次第」ということがよく分かる事例である。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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