世界と戦える企業を目指す -自動車部品関連メーカーS社

経営

西浦道明のメルマガ 2013年9月

自動車部品関連の企業の大半は、好むと好まざるとにかかわらず、海外展開を視野に入れざるを得ない。

ところが、S社のH社長は、工場の海外進出は一切考えておらず、日本にいながらにして世界の自動車メーカーと取引関係を深め、海外販売比率を、今の10%から40%にまで高めようとしている。

S社は、精密機械部品の加工や弱電品の部品加工をメインとしていたが、1990年代に自動車部品へシフトし、今では自動車部品関連が売上の9割のシェアを占めるに至った。

元々、精度に厳しく細かい部品づくりが得意で、「冷間鍛造順送プレス加工」という自社が開発した独自技術を携え、自動車部品業界に進出した。

この結果、「機械加工と同精度という高品質」と、「プレス加工ならではの低価格」を両立させ、自動車メーカーから大きな支持を得ている。

そんな素晴らしい技術と実績がありながら、S社のH社長は、「当社の最大のブランドは、加工技術ではなく社員だ」と言い切っている。

また、「ものづくりとは付加価値のあるものを創ることであり、そのためには、開発段階からいかにお客様に入り込むかだ。お客様から依頼された部品がどういう機能を果たし、どういう使われ方をするかについて、お客様から深く聴き出さなければならない。その上で的確に提案するのだ」と言っている。

これは、詰まるところ、「社員力」こそ、一番の経営資源ということだ。

お客様とともに開発を進める姿勢を大切にし、社員一人ひとりが仕事を通じて成長を実感できれば、お客様から支持を得続けることができるに違いない。

要は、徹底してお客様に密着し、いかにお客様にメリットのある提案ができるかに、全社を挙げて挑戦していこうということだ。

H社長は、リーマンショックのとき、父親である先代から若干29歳で事業を承継した。

全社員と真っ直ぐに向き合い、社員を心から大切にし、地元にいながらにして、世界と戦おうとしている。

お会いすると分かるが、今現在、33歳という若さにもかかわらず、謙虚な姿勢を崩さない。

H社長の先代は、どうやってこの後継者を育てたのか。

後継者育成に使命感を抱く私にしてみれば、同世代の後継者に、H社長をぜひ会わせたい。そして、刺激を受けていただきたいと強く思う。

彼のオーラに触れて、若い経営者が真っ直ぐに伸びてくれれば、日本の将来は明るい。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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