経営課題の本質と対峙せよ!~「目的の共有」と「心理的安全性」が先決

経営

中堅中小企業における経営課題の捉え方

私どものビジネス(経営コンサルティング)は、中堅中小企業の経営者や経営幹部の方からオーダーを頂くことから始まります。

「中期経営計画を作りたい」
「事業価値を算定して欲しい」
「上場準備を手伝って欲しい」
「経営改善計画を作りたい」

この最初のオーダーには3つのパターンがあるように私は感じています。

課題認識パターン①

1つ目は、「Aという目的を達成するためにBをしたい」と目的と手段を明瞭に繋げてお話し頂くケースです。AとBのつながりにも納得感があります。

課題認識パターン②

2つ目は、「Aという目的のためにBをしたい」と1つ目と同じ形でご要望は頂くものの、AとBのつながりに直感的に納得できないケースです。
よくよくお話をお聞きするとAを解決する手段としてBが適切でなかったり、Aという目的のさらにその奥に明確にすべき上位の課題が隠れていることがあります。

課題認識パターン③

3つ目は、「Bをしたい」「Cという形式でBを実施して欲しい」と「ご要望=手段、仕様」のような形でオーダーを頂くケースです。
Bという手段やCというディテールに意識が向いている分、それを用いて解決したい目的が2つ目のケースより曖昧なことが多いように感じます。
 

経営課題の本質をつかむ重要性

もちろんどのような形でオーダーするかはお客様が決めてくださればいいことです。また、私どもにお話頂くことで、お客様の思考の整理になれば、大変光栄なことです。

しかし、本稿でお話ししたいのはお客様が取り上げる「テーマ」についてです。

特に、2つ目3つ目のオーダーにおいて、解決すべき課題の本質が隠れてしまうのは、「当事者」間の「目的の共有」「心理的安全性」の不足に起因しているのではないかと考えます。

当事者間の「目的の共有」とは

「当事者」とは、

  • M&Aであれば自社と取引相手
  • 株式承継であれば前社長兼大株主と現社長
  • 中期経営計画策定であれば経営者と経営幹部
  • IPO準備であれば経営者と上場準備プロジェクトチームや主幹事

といったところです。

経営において、ものごとをただ一人で進めることはまずありません。どんなテーマにも当事者として関わる人たちがいます。
そしてその人たちの「当事者感覚」はとても大切です。

「目的の共有」については、達成しようとする目的が、当事者間でしっかりと共有されているか否かによって取り組みの成否が決まります。

  • M&Aや株式承継であれば、お互いの固有の利益を踏まえつつ、取引を成立させることで達成される双方共通の成果は何か
  • 中期経営計画策定やIPO準備であれば、そのプロセスとアウトプットを通じて得られる組織としての成果は何か

日頃身近にいるメンバー同士だと意識できなかったり、あるいは交渉相手となると売り手買い手の立場ゆえに構えてしまい、目的の共有化ができていないことが多いのではないでしょうか。
 

「心理的安全性」とは

次に「心理的安全性」です。

この言葉は字面から来る印象からか、「他人を傷つけない」と言う風潮と混ざり合って、上位者による部下とのコミュニケーションのライフハック(仕事術)のように、柔な考え方として誤解されていることが多いように思いますが、組織の精神・文化度としては高度な状態であり、それだけに難度の高いテーマです。

心理的安全性が高いと言うのは、

“目的を共有するメンバー(チームや取引相手)が、積極的に対人関係のリスクを取る言動を推奨しあう状態”

のことを指すものと私は理解しています。
メンバー同士がもの怖じせず、健全に意見を戦わせることの出来るチームがより良い成果をもたらすわけです。

多くの組織、多くのチームでは、肩書や上位者の日頃の言動などにより形成される力関係や役員・幹部の成功体験へのこだわりの強さが、社員から見た対人関係のリスクを高めてしまうこともあり、意識的か無意識的かを問わず萎縮したチームが産み出されがちなのです。

対人関係のリスクとは何でしょう。
「心理的安全性」概念の提唱者であるハーバード大学のエドモンドソン教授の言葉を引いてみましょう。

1.無知だと思われる不安
2.無能だと思われる不安
3.邪魔をしていると思われる不安
4.ネガティブだと思われる不安

この不安を解消するために人間が取る行動はシンプルです。

  • 疑問を口にしない
  • 意見・アイデアを言わない
  • 現状や誰かの意見を否定しない
  • 間違いを認めない

などです。いかがでしょうか。

経営層が考えるべき重要なテーマ

冒頭の、私どもへのオーダーのパターンにあるように、「手段先行」でものごとを進めたとしても、このような状態にあるメンバーでは良い成果を産み出すことは難しいのではないでしょうか。

どのような組織にも「心理的安全性を高めようとする行動を孤軍奮闘で実践している人が数パーセントだけいる」と言うのが私の現場経験から得た実感です。

このような行動、このような人材が、自然発生的にはその程度しか組織に産まれてこないものだとすると、いかに組織を心理的安全性の高い状態に持っていくかは、経営層が考えるべき重要なテーマであると共感頂けるのではないでしょうか。

経営課題を解決すべき組織やチームが精神的に健全な状態にあること、それが最も優先すべき事項です
それさえ実現していれば、課題そのものを経営的・実務的に解決していくことは、さほど難度の高いものではないと思います。
 

筆者紹介

株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 取締役 廣瀬 明
1968年生まれ。企業再生、財務・事業デューデリジェンス業務、M&A、株式公開のサポート等に従事。中堅中小企業への豊富な支援業務を通じて培った知識と経験を活かし、現在大阪事務所のプロジェクトマネージャーとして活躍中。
廣瀬明の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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