成功企業のビジネス着眼~「不便、不安、不満」のお困り事解決業!

経営

昨年秋頃にアタックスグループの顧問先である日本宅配システム(株)(名古屋市東区)の淺井泰夫会長と面談をしました。 同社の事業は主にマンションに設置されている宅配ボックスの管理です。

現在では北海道から九州まで支店網を持ち、全国2万棟のマンションに宅配ボックスを設置・管理しており、業界のシェアは50%近くに達します。 浅井会長が何故この事業を始めるに到ったのか経緯を紹介したいと思います。

自身の「不便」が事業スタートのきっかけ!

淺井会長は今から23年前、一流商社に勤務し東京でバリバリ働いていましたが、家庭の事情から親のビル賃貸事業を引継ぐため、名古屋へ戻ります。 その半年前から週末に名古屋で親を手伝い、賃貸マンション暮らしをしていましたが、その時宅急便などの荷物の受取りに大変不便を感じていました。

そして父親の事業を引継ぐと同時に、商社時代に育まれた企業家精神で自分がマンション暮らしで不便に感じたことの解決策として、宅配ボックスを事業化するためマーケットリサーチを開始しました。 当時、宅配ボックスは大手企業数社が新築マンションの建築時に付属設備として販売していました。これらの大手企業は宅配ボックスビジネスを手離れ良くする為、売切りであり、メンテナンスは専門業者に任せていました。

お客様の「不安」「不満」をニーズとしてとらえる

ところが淺井会長の考えた事業はそれとはまったく異なるもので、マンションの住民と契約し、宅配ボックスの管理を請うことを事業としたのです。 マンション住民の真のニーズは宅配ボックスを購入することではなく、宅配ボックスを利用して留守に届けられた荷物をいつでも安心して受取ることであることに気付いていたのです。

宅配ボックスを設置すると、利用者が鍵を無くしたり、管理が悪いと蜘蛛の巣が張っていたりすることもあり、メンテナンスが極めて需要です。 同社は正社員が全国2万棟の契約マンションに定期的に訪問し、稼働状況と管理状況をチェックし、合わせて清掃まで行います。

詳しくは同社のホームページを見て頂きたいのですが、アフターサービスが極めて充実しています。 保守管理契約して頂いた顧客に対しては、24時間フリーダイヤル受付で

(1) 操作方法が分からない
(2) 部屋番号間違いによりお届けミスが発生した
(3) 故障により扉が開かない
(4) カード紛失したが荷物を取出したい
(5) いたずら、盗難などによる利用履歴を確認したい

といった問い合わせに対応しています。

また顧客の種々なニーズに対してオプションサービスも用意されています。一例を挙げると宅配クリーニング、レンタサイクル、カーシェアリング、冷蔵ボックスなどがあります。

インターネットの普及、ネットショッピングの急成長による宅配荷物の急増で、クロネコヤマト、佐川急便の2大大手宅配便業者はドライバー不足です。 また再配達ロスが社会問題化し、時間で換算した場合、年間約1.8億時間、人件費に換算すると年間で約3000億円のロスが発生しているという。国交省でもこの問題を解決する施策を検討するという動きも始まっています。

成功の秘訣はこの3つ!

こんな状況下で同社の事業は、社会インフラ産業としての地位を着実に固めています。 同社の今日の成功はどこにあったのか、筆者は次の様に考えています。

一つ目は淺井会長が企業家精神にあふれた人物であり、自分自身が不便に感じたことを事業化したこと。

二つ目は、宅配ボックスの市場を徹底的にリサーチし、大手企業には出来ない戦略をとったこと。つまり自らの事業を宅配ボックス販売業ではなく、利用者の不便・不安・不満解決策提供業と考えたこと。

三つ目は時代の追い風に上手く乗ったことです。

ところで筆者は淺井会長が23年前宅配ボックス事業を始める時代から異業種交流勉強会の仲間でした。筆者は当時から淺井会長に事業化構想を聞かされており、その時の印象は「困り事解決業」として面白いビジネスではあるが少し時代を先取りし過ぎているのではないかと感じました。

しかし、淺井会長はインターネットの普及、ネットショッピングの拡大という時代を見越して、持ち前の企業家精神で見事に事業を軌道に乗せたのです。 同社の事例は、人口減少・需要縮少経済にある日本で今の事業を継続していたのではいずれ売上減少で経営が厳しくなる経営者が新たな事業展開を模索する上でおおいに参考になるのではないでしょうか。

アタックスグループでは経営者だけでなく幹部社員を巻き込んだ、中期的経営課題の抽出、解決シナリオ策定のコンサルティングをご用意しています。ご興味のある経営者は是非声を掛けて下さい
 

中期経営計画策定

筆者紹介

アタックスグループ 代表パートナー公認会計士・税理士 丸山 弘昭
数百社のクライアントについて「経営のドクター」として、経営・税務顧問、経営管理制度の構築・改善、経営戦略・経営計画策定、相続対策・事業承継、M&Aなどを中心としたコンサルティング業務に従事。幅広いネットワークと数多くの実績を生かし、経営者の参謀役、「社長の最良の相談相手」として活躍中。
丸山弘昭の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

タイトルとURLをコピーしました