「人生の節目」に気づきを与える“年齢別教育”の効能

人材育成

「結局“人づくり”なんだよ・・・」、経営の問題を社長と語るとき、必ずと言っていいほど口を突いて出てくるのがこの言葉である。企業が成長するためには、社員に対する教育投資が欠かせないことは誰もが認識している。とりわけ、現在の閉塞した経営環境を突破する力量を持った、逞しい次世代人材を育成することが、経営の最も重要なテーマと言ってもいいだろう。

一般的に企業で行われている教育は、階層別研修、専門別研修が最も多く、様々な教育手法が開発され企業に導入されている。その中で、三菱電機の“年齢別研修40歳・25歳向け追加“の記事が目を引いた。

従来から導入されている30歳向け研修に加え、40歳には、後輩への指導力強化として、自らの成長のきっかけとなった出来事を振り返って、後輩への関わり方を学ぶ。更に安全衛生・品質管理も盛り込まれる。また25歳向けには、企業倫理や、個人情報保護、経理などの基礎知識、ビジネスマナーや文書作成、プレゼンテーション技術などの知識を学ぶとある。

“年齢別研修”というのは聞き慣れないかもしれないが、長年、企業の人材育成に携わってきた者として感じたことは、従来の階層別、専門別の教育に加えて、今回の記事にある“年齢別教育”が今後益々重要になってくるのではないかということだ。

実際に、ある企業において、「人生の節目」と「キャリアの節目」がクロスする年次に、階層別教育とは別に、「キャリア形成教育」を体系化したことがある。

そこでは、入社後はじめて役職を任命される直前の入社5年目、27歳と、役職に就き、転職を含めキャリアについて悩む年頃にあたる、入社8年目、30歳のタイミングで実施している。

いずれも、会社の人事システムを改めて確認し、自らの役割を自覚すると共に迷いを払拭し、自らの仕事人生を主体的に考えさせることを狙いとしており、実際この会社では、教育の導入によって、中堅社員の成長促進と退職防止に効果を上げている。

今回の三菱電機の“年齢別研修”も、新たに設定した40歳、25歳という年齢に、会社の問題意識や意図が込められていることは間違いない。

いずれにしても、定年年齢の上昇と共に仕事人生が伸びる中、人材教育のあり方も変化していかなくてはならない。その方法論として、長い仕事人生を、最後まで活き活きと働く社員を育成するための、「人生の節目」に気づきを与える教育を取り入れることは有効だと考える。

これから年度末にかけて、来年度の教育を考える季節である。是非ともこの時期に、自社の人材教育に関する問題点を洗い出し、真の“人づくり”を実現する教育計画を立てて頂きたい。

<参考記事>
「年齢別研修 40歳・25歳向け追加 ~三菱電機 資質・役割の自覚促す~」
2011年9月26日(月)日本経済新聞 朝刊

筆者紹介

株式会社アタックス 執行役員 中小企業診断士 北村 信貴子
1963年生まれ。中小企業診断士、産業カウンセラー、BCS認定ビジネスコーチ。大手食品メーカー勤務後、アタックス入社。中堅中小企業を対象に経営診断や人事制度設計運用・人材育成業務に従事。現在は、後継者育成、管理者教育、女性リーダー育成を中心に実践型の教育訓練・能力開発に特に注力。講演・セミナー実績多数。受講者との対話を通じて理解を深めていく迫力ある指導には定評がある。
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