横行する詐欺的倒産からの教訓~情報の非対称性の罠とは何か!

空前の金融緩和もあって、倒産件数が低水準で推移する中、最近少し目につくのは詐欺的な倒産です。

昨年の“てるみくらぶ”、今年年初“はれのひ”、最近では“スマートデイズ”が展開したシェアハウスの“かぼちゃの馬車”でしょうか。何れも、サービスの提供を受けるのが対価を支払った後となるため、顧客への影響が大きくなりました。

その中で、金融商品的な側面の大きい“かぼちゃの馬車”のケースで、何が問題だったのかを見てみたいと思います。

簡単に説明すると、同社は進学・就職で上京する若い女性向けにシェアハウスの企画・管理運営を行っていました。その建設資金は、資産運用を目的とした投資家達に金融機関から調達させ、自社が家賃保証をした家賃からその返済資金を捻出する(いわゆるサブリース)というスキームで近年急拡大してきた企業です。

然しながら、低入居率及び、金融機関の融資審査の厳格化等から、急速に資金繰りが逼迫し、最終、民事再生から破産に至りました。 当然、保証されていた家賃を受け取れなくなった投資家は借り入れの返済資金に窮することになりました。このスキームに乗った投資家は約700名、負債総額は1,000億円とも言われています。

何が問題だったのでしょうか。

答えはシンプルです。“かぼちゃの馬車”に投資した方々は恐らく自分が何に投資をしたのか全く理解していなかったのではないでしょうか。

通常、人が何かを取引する時、その目的は比較的、明確かつ具体的で、かつその実現可能性について一定の知見を有しています。エアコンを買う人は「空気を冷やす」という機能に、車を買う人は「移動する」という機能に対してお金を払います。ブランドバッグを買う人は「ブランドの価値」そのものにお金を払います。

ところが、金融商品・運用商品の取引をする人は、単に利回りといった表面的な数字のみを意識しがちです。何にその価値があるのか、という本質を理解しようとしない方が多いような気がします。“かぼちゃの馬車”に投資した方々も、その仕組みになぜ、どれ位の需要があるのか、という投資対象の本質的な価値に思いを巡らしていなかったのではないでしょうか。

取引時点で、当事者同士が情報を正しく共有せずに取引してしまうことを“情報の非対称性”と呼ぶことがあります。これは、主に経済学で、売り手と買い手がお互いに同じ情報を持たずに取引することを言います。そのズレがいずれかに不利益を生じさせる原因になることがある、と言うものです。

“かぼちゃの馬車”で損失を被った人が続出した理由には次のものが考えられます。

(1) 低金利下での運用収益の期待
(2) ベンチャー流行の中での同社への評価向上
(3) 女性活用・弱者保護等の流れとマッチする戦略ストーリー
(4) 大手人材派遣企業や金融機関との提携による信用補完

本件は、(1)(2)で環境整備された上で、(3)の大義名分、(4)の安心感が存在しました。このため、多くの人が、本来あるべき客観的な評価をせずに、この取引に投資してしまったのではないかと推察します。

“不動産投資なんてやらないので関係ない”と思われる方も多いと思います。しかし、全ての取引に関して、このような情報の非対称性に伴う、不利益を受ける可能性があるのが今日です。残念ながら、知名度のある企業や金融機関相手でも安心できない時代になっているのかもしれません。

理解できない取引は行わない。これがすべての取引の基本です。とは言え、色々な変化の時代、全ての取引を理解することもまた困難です。自分の知見を広めたり深めたりすることも大切ですが、理解に苦しむことがあれば、客観的な立場からアドバイス出来るブレインを持つことも一つの手段です。

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筆者紹介

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株式会社アタックス 執行役員 金融ソリューション室 室長 松野 賢一
1990年 東京大学卒。大手都市銀行において中小中堅企業取引先に対する金融面での課題解決、銀行グループの資本調達・各種管理体制の構築、公的金融機関・中央官庁への出向等を経て、アタックスに参画。現在は、金融ソリューション室室長として、金融・財務戦略面での中堅中小企業の指導にあたっている。
松野賢一の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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