ご注意!個人の租税回避、申告漏れ~タックスヘイブン対策税制の個人への適用~

タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)については、折に触れてこの時流解説でもお伝えしています。 今回は、このタックスヘイブン対策税制の個人への適用について触れたいと思います。

タックスヘイブン対策税制とは、簡単に言えば、香港など税率の低い国や地域に作った子会社などに所得を移すことで課税逃れをされないよう、子会社の所得を日本の親会社の所得とみなして課税する制度です。

5月13日の日経新聞で、宝飾リサイクル大手「ネットジャパン」の株式売却を巡って創業者会長とタックスヘイブン対象国にある会社が東京国税局から所得税等約66億円の申告漏れを指摘され話題になりました。

タックスヘイブンとして知られる英領バージン諸島に会長が100%出資の会社を設立し、2012年に自身が保有するネットジャパン株をこの会社に譲渡しました。

その後、ネットジャパン株は別会社に転売され、多額の売却益が発生していたことを東京国税局の調査によって指摘されたのです。

タックスヘイブン対策税制は法人だけではない

タックスヘイブン対策税制は、法人だけに適用されるものでなく日本の居住者である個人に対しても適用されます。個人の株式保有割合に応じて低税率国に設立した会社(特定外国関係会社等)の所得を個人の所得と合算して課税します。

個人が適用を受ける場合には、その特定外国関係会社等の各事業年度終了の日の翌日から2ヶ月を経過する日の属する年分の「雑所得」として日本の確定申告で課税されます。

雑所得の金額は、給与所得など他の所得の金額と合計して総所得金額を求めて納める税金を計算します。

この際の課税は総合課税で累進税率が適用されますので、5%から45%と所得が多くなるにつれて税率も高くなります。住民税も考慮すれば最大で55%の課税となりますが、これは法人税の実効税率よりもかなり高い税率です。

従って、法人でタックスヘイブン対策税制が適用される場合に比べると、より税負担が重くなるのです。

タックスヘイブン対策税制の二重課税にご注意?!

また、特定外国関係会社等がある国等の法令に基づき、特定外国関係会社等に対して外国の法人税に相当する税が課されることもあります。この場合に日本でタックスヘイブン対策税制が適用されると、実質的に日本と外国で同じ所得に対して二重に課税されることが生じ得ます。

タックスヘイブン対策税制の適用を受けた内国法人については、原則として、特定外国関係会社等が納めた外国法人税をその内国法人が納めたものとみなして、外国税額控除を適用することが認められています。

しかし、個人の場合にはこの控除は適用されませんので、結果的に二重課税となってしまう点も大きな税負担です。

さらに、特定外国関係会社等から配当を受け、その配当金に対しても日本で課税されるとこれも実質的に同じ所得に対して外国法人税と所得税が二重に課税されてしまいます。

この調整措置として、個人が特定外国関係会社等から配当を受けた場合には、一定の条件の下、その配当金相当額を配当所得の計算上、控除されることになっています。

なお、この調整措置の適用を受ける配当に外国の源泉所得税等が課されていたとしても、その外国源泉所得税等の額は外国税額控除の対象とすることはできません。

また、税務当局の職員は、居住者である個人に対しても、外国関係会社(個人が50%超の株式を直接・間接に支配している外国法人)が特定外国関係会社等に該当するかどうかを判定するために必要がある場合には、期間を定めて外国関係会社の関係書類等の提出を求めることができることになっています。

資料等の提出がなされないと、当該外国関係会社は特定外国関係会社等に該当するものと推定されてしまいます。 ですので、海外に個人で出資する会社があるときは、外国関係会社に関する書類を事前に整備・保存することが大変重要となります。

個人へのタックスヘイブン対策税制の適用は、気付かないことも多く思わぬところで大きな税負担が強いられることになります。
法人の場合と同様、慎重な事前準備と対応が必要です。

私どもアタックスグループでは、タックスヘイブン対策税制対応についてのご相談、経済活動基準適用に関する分析や海外子会社に対するインストラクションなどのご支援を行っております。

こちらからお気軽にご相談いただければと思います。

国際税務支援

筆者紹介

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アタックス税理士法人 社員 公認会計士・税理士 伊藤 彰夫
1967年生まれ。資本政策、事業承継、相続対策、M&A、国際税務の各ニーズに対応したコンサルティングに数多く従事。国際税務では、移転価格税制の対応、海外を活用したファイナンシャルプランニング、クロスボーダー交渉などの実績を誇る。現在、上場企業及び関連企業法人チームの統括責任者兼国際税務チーム責任者。
伊藤彰夫の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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