巨額な税負担の可能性も!~改正タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)適用迫る!

タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)とは、日本の親会社が税率の低い、あるいは税金のかからない国にある関係会社を通じて租税回避を行うことを防止する制度です。この税制が適用されると、外国関係会社の所得が親会社の株式保有割合に応じて親会社の所得として合算され、日本の法人税が課税されることになります。

平成29年度に大幅な税制改正が行われ、この平成30年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。今後、海外に進出されている企業は早急に海外子会社等の情報収集を行い、資料準備等、必要な対応を行うことが求められます。

新税制では、「経済活動や価値創造の場所」と「税が支払われるべき場所」を一致させるべく、税制適用の適正化が図られています。今回は、この改正タックスヘイブン対策税制の概要を整理したいと思います。

従来の制度では、外国関係会社の所在する国の税負担水準が20%(トリガー税率)以上であれば事業実体を伴わない所得であっても一切、合算課税がありませんでした。一方、実体のある事業から得た所得でも税率が20%未満の場合は合算されてしまうという問題がありました。

新制度ではトリガー税率を廃止し、事業実体のない「ペーパーカンパニー(※1)」や事実上の「キャッシュボックス(※2)」、「ブラックリスト国所在会社(※3)」を合算課税の対象としてフィルターにかけています。また、企業の事務負担軽減措置として、租税負担割合が30%以上の場合は制度適用を免除しています。

ペーパーカンパニー等に該当しない外国関係会社については、「経済活動基準」という要件を全て満たすかどうかを検討しなければなりません。

<経済活動基準>
(1) 事業基準
主たる事業が、株式又は債券の保有、無形資産等の提供、船舶リース等でないこと

(2) 実体基準
本店所在地国に主たる事業に必要な事務所等があること

(3) 管理支配基準
本店所在地国において事業の管理、支配及び運営を行っていること

(4)
非関連者基準(卸売業など8種)
非関連者との取引が全体の50%超であること
又は、
所在地国基準
事業を主として本店所在地国で行っていること

上の全ての要件を満たさない場合は会社単位で合算課税され、要件を満たす場合は、一定の受動的所得(※4)について部分合算課税されます。

新制度では大幅にこの受動的所得の範囲も拡大しています。さらに、いずれの場合でも租税負担割合が20%以上であれば制度適用が免除されます。 【図:改正タックスヘイブン対策税制の概要】

このように事業実体のないペーパーカンパニー等の所得や事業実体があっても外国関係会社で行われる投資からの所得については、合算課税の対象となる範囲が拡大されています。 一方で、事業実体があるにもかかわらず合算課税の対象となっていた航空機リースや第三国で委託加工を行う製造業などについては、合算課税の対象外となるよう実体に即した手当がなされています。

その他、外国関係会社の判定においても、親会社が外国関係会社の残余財産の概ね全部について請求できるか、外国関係会社の財産処分の方針の概ね全部を決定できるかの判定を加え、実質支配による基準を導入しています。

改正後のタックスヘイブン対策税制では、適用基準が大きく変更されており、外国関係会社がペーパーカンパニー等に認定され、合算課税の対象になってしまうと巨額の税負担が発生することも予想されます。加えて、これまで対象とされていなかった貸付金の利子や配当金、株式の譲渡益等も合算課税の対象に含まれることになり、チェックを怠っているとこちらも思わぬ課税負担が生じます。

また、新制度では、外国関係会社がペーパーカンパニーでないことや経済活動基準を満たすかどうかの書類を提出することを納税者に求めており、期日までに提出できない場合には、推定課税される規定もあります。 今一度、海外子会社等の情報を整理、分析いただくとともに、必要に応じて事業実体の証明できる書類等を事前に準備することが重要です。

私どもアタックスグループでは、タックスヘイブン対策税制対応についてのご相談、経済活動基準適用に関する分析や海外子会社に対するインストラクションなどのご支援を行っております。こちらからお気軽にご相談いただければと思います。

※1
主たる事業を行うに必要な事務所等の固定施設を持たず、
かつ、その本店所在地国において
事業の管理、支配、運営を自ら行っていない外国関係会社

※2
総資産の額に対する受動的所得(※4)の割合が30%を超え、
かつ、総資産の額に対する金融資産等の割合が50%を超える外国関係会社

※3
情報交換に関する国際的な取り組みへの協力が著しく不十分な国・地域に
本店等を有する外国関係会社で、財務大臣によって指定(告示)

※4
金融所得、知財使用料、リース料等の一定の所得

筆者紹介

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アタックス税理士法人 社員 公認会計士・税理士 伊藤 彰夫
1967年生まれ。資本政策、事業承継、相続対策、M&A、国際税務の各ニーズに対応したコンサルティングに数多く従事。国際税務では、移転価格税制の対応、海外を活用したファイナンシャルプランニング、クロスボーダー交渉などの実績を誇る。現在、上場企業及び関連企業法人チームの統括責任者兼国際税務チーム責任者。
伊藤彰夫の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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