「内部留保」は会社の強さの証~今さら聞けない会計用語

財務省が発表した法人企業統計で、2018年度の『内部留保』が7年連続で過去最大を記録しました。金融業・保険業を除く全産業ベースで、2017年度と比べて3.7%増加の463兆円となったとのことです。

日本のGDPに迫る勢いで企業が利益をためこんでいます。
背景には何があるのでしょうか?

大企業が世界経済の先行きや、消費増税を控えた国内景気動向などの様々なリスクを不安視して、ヒト、モノへ積極的な投資や株主還元を控えていることがありそうです。

大企業はリスクに備えてガチガチの防御の構えを貫いているようなイメージでしょうか。

では、そもそも『内部留保』とは何なのでしょうか?

内部留保(ないぶりゅうほ)とは?

私が関与している中小企業の経営者は会社の単年度の利益やキャッシュ・フロー、税金には高い関心を持たれます。しかし、『内部留保』にはあまり関心を持たない方が多いです。

一方、私が売上、利益、キャッシュと同じくらい重要視しているのが『内部留保』の水準や推移です。『内部留保』は中小企業の経営数値として大切なものですので、今回、改めて解説させていただきます。

『内部留保』は会計上、利益剰余金と呼ばれます。
よく勘違いをされる方がいますが、『内部留保』は預金残高のことではありません。

会社の設立から現在に至るまでの損益計算書における当期純利益の累計額から配当金等を差し引いたものです。

下の図のように決算書では貸借対照表の右下に表示されます。

貸借対照表

会社法上、利益剰余金は株主への配当原資を示すものですが、会社の財務の視点からすると、資本金と『内部留保』を合算したものが自己資本と呼ばれます。

会社が自らの事業で稼いだものですから、返済が必要な銀行借入などの他人資本に対して、返済不要の自己蓄積といった意味合いです。

このため、『内部留保』が高い水準であれば、環境変化等による一時的な損失が生じても会社の存続が危ぶまれることはありません

一方で、『内部留保』が低い水準であったり、マイナスであったりすると、いくら事業の将来の見通しが明るくても、少しの損失で会社の存続に危険信号が灯ります。

このような数値であるため、『内部留保』の水準は会社の健全性・安全性を示すものであり、会社の強さの証のひとつと私は考えています。

また、貸借対照表上、資本金と『内部留保』の合計額は、資産と負債の差額であることから、純資産と呼ばれます。これは会社のその時点の価値を示すものです。

このため、中小企業経営において純資産がクローズアップされるのは、M&Aや事業承継に際して株式の譲渡、移動がなされる時や金融機関やスポンサーから会社の評価をうける事業再生の局面です。

M&A等では『内部留保』が高い水準の会社は、株式が高く売れますし、事業再生の局面でも『内部留保』のマイナスが僅かであった場合は会社の評価は相対的に高くなります。

内部留保を高める方法

最後に、中小企業が強い会社を目指して、『内部留保』を高めていくために必要なことをお話しします。

それは、単年度の利益に一喜一憂することがない会社の指針をもつことです。

既存事業が単年度の黒字であっても、大企業と比べて事業リスクが高い中小企業は、大企業のようにガチガチの防御をしているだけでは中長期的に『内部留保』は高められません。

既存事業の強化や新たな事業のチャレンジのための有効なヒト、モノへの投資を怠っては、中長期的な黒字の継続は覚束ないでしょう。

既存事業で単年度の赤字であるなら、当然、全力で収支の改善を図らなければなりません。

皆様の会社の『内部留保』を何年後にどの水準を目指すか、そのためにどこで利益を得て、何に投資をするか、何を改善していくか、これを機に一度お考えになっていただければと思います。

株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティングは、ファイブステップ(調査分析→問題発見→課題整理→改革提案→実行支援)コンサルとして中小企業の経営改善に関する様々なお悩みに対し、現状分析から課題解決のためのご支援を行っています。こちらからお気軽にご相談ください。

筆者紹介

株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 執行役員 公認会計士 森下 大
1999年 早稲田大学卒。中堅中小企業の事業再生・買収のアドバイザーとして、財務・事業デューデリジェンス、経営計画策定支援を中心としたコンサルティング業務、並びに、計画経営推進のための経営顧問業務に従事。公認会計士としての知識・経験を活かし、社長の良き相談相手として伴走型の支援を行うことで定評がある。
森下大の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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