トヨタ自動車「一律定昇廃止」の衝撃!~賃金改革から見える危機感

人材育成

トヨタ自動車が一律定昇の廃止を発表しました。

かねてから、旧来の自動車メーカーは衰退し、テスラのような全く新しいメーカーが台頭するという予測もあり、トヨタは危機感を募らせていました。

今回の賃金制度改定は、トヨタの危機感の強さを表すものであり、衝撃的な出来事です。

トヨタ一律定昇廃止の概要

まずは、改定の概要を確認しましょう。

日経新聞の報道によると、従来のトヨタの基本給は

  • 職位に基づき一律に決まる「職能基準給」
  • 個人評価が反映される「職能個人給」

この2要素の合計でした。

それを今回の改定で、評価に基づく「職能給」にまとめ、定期昇給から一律部分を無くし、評価の良い社員の昇給金額を増やすとのことです。

基本給3つの昇給手法

基本給の昇給手法は、以下の3つです。

定期昇給

定期昇給(略して定昇)とは、一般的に年に一回、会社の基本給の仕組みを運用することで社員の給与を増やすことを言います。

社員を職能(職務遂行能力)や職務のレベルによって階層化する仕組み(職位や等級など)と連動して設計されることが多いでしょう。

下記のイメージ例をご覧ください。

▼基本給管理のイメージ例

階層 下限 上限
3等級(高位) 400,000円 500,000円
2等級(中位) 280,000円 350,000円
1等級(低位) 200,000円 250,000円

ベースアップ

定昇とベースアップ(略してベア)を同じものと捉えている方がいらっしゃいます。

しかし、定昇とは下限と上限の範囲の中で基本給を決める(昇給)させることであり、ベアとは下限・上限の金額そのものを上昇させることを言います。

例えば1万円のベースアップではイメージ例が以下のように変わります。

▼ベア後の基本給管理イメージ例

階層 下限 上限
3等級(高位) 410,000円 510,000円
2等級(中位) 290,000円 360,000円
1等級(低位) 210,000円 260,000円

ベアをしたから定昇は無しということは基本的にありません。

例えば、2等級で280,000円の支給を受けていた人が定昇で4千円昇給したならば、ベアの1万円分も加算されて、計1万4千円の昇給で294,000円となります。

また、ベアは評価に関係なく、社員全員が一律対象となります。

固定費上昇につながりやすいため、近年、中堅中小企業ではベアを行う企業は殆どありませんでした。

昇格昇給

階層が上がることにより昇給することを昇格昇給と言います。

基本給の昇給手法は、まとめると定期昇給・昇格昇給・ベースアップの3つということになります。

トヨタが廃止した一律定昇とは?

「では、一律定昇とは何?」
と疑問を持つ方もいらっしゃるでしょう。

下記のイメージ例をご覧ください。

▼定昇イメージ例

評価 一律定昇金額 評価反映定昇金額 定昇金額合計
高評価 2,000円 4,000円 6,000円
中評価 2,000円 2,000円 4,000円
低評価 2,000円 0円 2,000円

今回のトヨタの賃金制度改定は、
「定期昇給から、一律部分を無くし、評価の良い社員の昇給金額を増やす」
ものであり、定昇イメージ例は以下のように変わります。

▼改定後の定昇イメージ例

評価 一律定昇金額 評価反映定昇金額 定昇金額合計
高評価 0円 8,000円 8,000円
中評価 0円 4,000円 4,000円
低評価 0円 0円 0円

2020年春、トヨタはベースアップを行いませんでした。
おそらく今後もベアは行わないでしょう。

そして、今回の一律定昇廃止です。

固定的な昇給が一切無くなり、評価による賃金格差が大きくなることを意味します。

ベアと一律定昇が当たり前であったトヨタ社員の受けた衝撃は大きかったと想像します。

ただ、この賃金改定について労使は合意しました。経営層の危機感が社員側にも理解された結果であり、社員の覚悟も感じることができます。

そして、昇給金額を決める評価の要素は、「実行力」「人間力」であると報道されました。

実行力とは「専門性を発揮し、仕事を前に進め、人を育てる力」
人間力とは「周囲に好影響を与え、頼られ信頼される力」

詳細な内容は分かりませんが、何れの要素も定量的に把握しにくく、評価される側にとって納得感を持ちにくいものではないかと想像します。

評価による賃金格差が広がることもあり、評価者の責任は非常に重くなります。

社員に評価の納得感と成長意欲を持ってもらうために、コミュニケーション量を増やすことも必要になるのではないでしょうか。

人事制度を回すのは評価者である管理職です。今回の制度改定に管理職の意見が反映されているならば、その覚悟は経営陣と同水準であると考えます。

一律定昇廃止は、場合によっては労働法における「不利益変更」に当たる可能性があり、訴訟に至ることもあり得るものです。

それでも、今回トヨタは踏み切りました。日本No.1企業と言ってよい、あのトヨタがです。

実行力と人間力を今以上に高めたトヨタ社員が会社を変え、日本のトップを走り続けることを期待しますし、そうなるのではないかと思わせるほどの賃金制度改定です。

人事制度は、社員への最大の経営メッセージであると筆者は考えています。

今回のトヨタのように、将来を冷徹に見据え、社員と共に会社を変える一歩を踏み出す必要があるならば、人事制度の見直しに躊躇はしないで頂きたいと思います。

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筆者紹介

株式会社アタックス・ヒューマン・コンサルティング 取締役 永田 健二
1999年 静岡大学卒。中期経営計画策定支援、組織風土分析支援、人事制度構築支援、人事制度運用支援などに従事。新入社員研修、中堅社員研修、管理者研修、各種個別研修など研修講師としても活躍中。
永田健二の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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