大廃業時代の歯止めとなるか?~2018年度税制改正の事業承継税制

最近、後継者がいないと悩まれているお客様からよく相談されるようになりました。 実際、新聞等の報道でも後継者難から廃業が増えていると伝えられており、その数は2025年までに130万社とも言われています。

日本の法人数は約382万社で、そのうち97.7%が中小企業です。(総務省「平成26年経済センサス-基礎調査」より)つまり約373万社のうち実にその3分の1の会社が2025年までに無くなってしまう計算です。 なんとも途方も無い数字で、まさに大廃業時代の到来といえます。日本経済に及ぼす影響は計り知れません。

廃業を決意する理由は色々ありますが、約3割が後継者がいないからという理由です。(中小企業庁委託調査「中小企業の事業承継に関するアンケート調査」より) 労働者不足とよくいわれますが、経営人財も不足しています。ここでも人口減少問題が日本経済に影を落としています。日本の将来を考えると、この人口問題を本気で議論すべき時ではないかと強く感じます。

こういった状況の中、少しでも事業承継が円滑に進むよう、2018年度税制改正で事業承継税制における優遇策の拡大が検討されています。事業承継税制とは、非上場企業の経営者から後継者が同企業の株式を引継ぐ場合に、相続税や贈与税を一部猶予し、中小企業の世代交代を後押しする制度のことです。

現行制度では、納税猶予の対象となる株式は、発行済み株式総数の3分の2までとなっており、納税が猶予される額は、相続税額の80%までです。 つまり、この制度を使っても相続した株式にかかる相続税のうち53%しか猶予されません。さらに、雇用の80%以上を5年間維持するなど一定の条件が付いています。 当然、条件を満たさなくなった場合や廃業した場合には猶予された税額を納付しなければならないため、利用件数は年500件程度と低調なのが現状です。

この事業承継税制が2018年度税制改正により大きく拡充されそうです。納税猶予の対象となる株式は、発行済株式総数の全株となり、納税が猶予される額も相続税額の100%となる見込みです。つまり、事業を継続している限り後継者の株に関する税負担はゼロになります。 また、猶予条件も緩和される見込みで、5年間で80%の雇用を維持する必要が無くなる代わりに、一定の雇用計画の策定のみで事足りるようになります。

人手不足に悩む中小企業としては有難い限りです。後継者難からこの先廃業が増えると予想される日本経済を税制面から後押しするのが目的ですから、今後10年間の事業承継に限定して適用される見込みです。

現状では改正内容にまだ不確定要素が多い状況ですが、株式を引継ぐ際の税負担の重さが事業承継のネックになっている後継者の方にとっては、非常に心強い税制改正となり、利用件数も増えそうです。 この10年間に税制を上手に活用することで、計画的な事業承継を進めていただければと思います。

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筆者紹介

アタックス税理士法人 税理士 海野 大
1996年 法政大学卒。税務顧問業務をはじめ、税務コンサルティング業務や組織再編実行支援業務のプロジェクトリーダーとして活躍中。税務指導のほか、経理業務改善、経営財務面からの強い会社づくりにも注力している。
海野大の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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