「今さらコーチング?」という人のための「今からコーチング」

人材育成

「コーチング」って何?
「コーチング」ってスポーツ界ではよく聞くけどマネジメントに有効?
「コーチング」するよりも教えた方が早いんじゃないの?

いまだに多くの経営者、管理者がこのような感想をお持ちではないでしょうか。

「今さらコーチング?」と思っている人は、「部下に、どうしたいの?と聞いても答えが出てこない。聞くだけ時間の無駄」と考えます。しかしそうではありません。

本コラムでは、これからの時代に「コーチング」が有効な理由を3つの論点から解説します。

1.時代の変化で組織はこう変わった

昭和の時代から、平成、令和へと時代が移り変わり、組織を構成する社員も様変わりしました。一昔前は、正社員、男性中心の職場が大半でした。

「正社員同士、男同士」という言わば「同質の集まり」です。この時代の管理者は楽でした。高度なコミュニケーションスキルがなくてもお互いに分かりあえたからです。

それに比べて現代の組織は、正社員、契約社員、パート、アルバイト、時短勤務のワーキングママ、60歳以降の嘱託ベテラン社員と、あらゆる雇用形態、属性が存在する組織が当たり前になりました。

まさにダイバーシティー(多様性)です。

「同質の集まり」に対して「異質の集まり」の特長は「分かり合おうとしなければ、分かり合えない」ことにあります。更に、一人ひとりに適した導き方をしなくてはなりません。

期待する役割と成果が異なるからです。最近は、上司と部下の「1on1」が話題になっていますが、現代の経営者、管理者は、部下と1対1で向き合い、相手との対話を通じて期待値を伝えていくことが求められています。

そして、そこには「コーチングスキル」が不可欠です。

2.経営活動とコーチングの共通点

「やる気に満ちた社員が、自ら考え行動する組織」
「一人ひとりが目標に向かって自発的、自律的に行動し成果を上げ続ける組織」

そんな組織を経営者、管理者は心からつくりたいと願っています。

では、どうしたらそのような社員が育つのでしょうか。

これを理解するには、やる気の源泉を知る必要があります。そしてそれがコーチングのメカニズムにどう組み込まれているかを知る必要があります。

コーチングは、あるべき姿(理想、目標)と現状とのギャップを埋めるための行動を強化し、確実に到達させるためのコミュニケーションスキルです。

コーチを和訳すると「馬車」であり、A地点(現状)からB地点(あるべき姿)まで荷物を運ぶかのように、伴走する人と解釈できます。

その過程において、

何を目指すのか(①目標)
今現在どこにいるのか(②現状)
そのギャップを埋めるために何が有効で(③計画)
いつまでにすべきか(④期限)

を決めて実行させる。

そのプロセスに伴走するのが、コーチの役割です。

コーチングとは

コーチングは、コーチによる質問と、コーチされる側の回答を通じて「オートクライン」効果を狙っています。これは話した内容が話し手である本人に作用する働きです。

皆さんも話をしているうちに、新しいアイディアが湧いてきた、頭が整理できたという経験はお持ちでしょう。まさにそれです。

また、コーチングでは、最終的に何をいつまでにすべきかを本人が決めます。これをコミットメント(公約)と言います。これが無いコーチングは雑談です。

そして、これらのプロセスが「自己説得」を産みます。

人は、他人から「やれ」と言われるよりも、自分が「そうだ、これは重要だ」「私がやらなくては」と思ったときに実行するものです。

つまり、人は、その仕事が「自分事」になったときにやる気が起きます。

このように経営活動と、コーチングのメカニズムには重なる部分が多く、このスキルを活用することで、目指す組織に近づくことができます。

3.「質問力・傾聴力」を習得し人を見て法を説け

コーチングの必要性、有効性はご理解いただいたと思いますが、コーチングを成立させるには条件があります。

それは上司の「コーチングスキル」と「部下の経験」です。

コーチングは、コーチの質問力と傾聴力によって成否が決まります。

多くの経営者や管理者は、質問はできても傾聴が十分ではありません。答えを披露したくなってしまうからです。

「それじゃだめだ、こうすべきだよ」「それはこうするとうまくいくよ」と言った具合です。

これをやっているうちは、部下は自分で考え、自分で決め責任をもって行動することができません。

まずコーチが、質問力と傾聴力をしっかりトレーニングし、優れたコーチングスキルを身につけることが必要です。

また、すべての部下にコーチングが通用するかというとそうではありません。

未経験者、新入社員にいきなり「どうすればいいと思う?」と質問しても、引き出しの無い相手にコーチングは難しいと思います。

こういう場合は、ある程度上司側が主導して、やるべきことの優先順位を明確にしていくことが効果的です。まさに「人を見て法を説け」の諺どおり、導いていくことが大切です。

最後に、「今さらコーチング?」ではなく、「今からコーチング」という気持ちでコーチングを学びましょう。

そして、「やる気に満ちた社員が、自ら考え行動する組織」「一人ひとりが目標に向かって自発的、自律的に行動し成果を上げ続ける組織」を実現してください。
 

経営人材コーチング

筆者紹介

アタックスグループ パートナー
株式会社アタックス・ヒューマン・コンサルティング 代表取締役
中小企業診断士 北村 信貴子
1963年生まれ。中小企業診断士、産業カウンセラー。大手食品メーカー勤務後、アタックス入社。中堅中小企業を対象に経営診断や人事制度設計運用・人材育成業務に従事。現在は、後継者育成、管理者教育、女性リーダー育成を中心に実践型の教育訓練・能力開発に特に注力。講演・セミナー実績多数。受講者との対話を通じて理解を深めていく迫力ある指導には定評がある。
北村信貴子の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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