今、必要なのは「上司の意識改革」~もう一つの「改革」のススメ!

人材育成

2月に入り、新年度に向けて様々な準備に忙しい季節となりました。
今年、最も重要な経営課題として、多くの企業が方針に掲げたのが、「働き方改革」ではないでしょうか。

今やこのテーマは、コンプライアンス(法令遵守)の域を超えて、選ばれる企業、賞賛される企業になるための、競争戦略といっても過言ではありません。 日本人の根底にある、仕事に対する「価値観」や「美徳」をくつがえし、これまでの悪しき労働慣行を一掃するという政府の意気込みが、「改善」ではなく、「改革」という言葉からもうかがえます。

労働現場の改革に真剣に切り込んでいけるかどうか、これが、企業の持続的成長に影響することは自明であり、「働き方改革」の成功企業を参考に、自社においてどのように取組んでいくか、経営トップが真剣に考えることが重要です。

しかし、単に労働時間を短くする、休みを増やすことが、「働き方の問題」すべてを解決するわけではありません。仕事をする上での「生きがい、働きがい」は、労働時間の短縮と休日数の増加だけで満たされるわけではないからです。

若手社員の意識は、指導的立場の中心年齢となる40代~50代の私たち世代の意識とは、大きく異なります。若手社員を発奮させ、成長を加速させるには、労働環境の整備と同時に、私たち上司の意識改革が不可欠です。

ヒルティの『幸福論』にもある、「生きる喜びは仕事とともにある」という言葉は、まさに人間の幸せとは何か、働くことの意味とは何かを私たちに投げかけています。

障がい者雇用の先進企業として、今や知らない人がいないほど有名になった日本理化学工業の大山会長は、当初、障がい者の方たちが、「働きたい」と強く望むことに疑問を抱きました。そしてその解を導師から学びました。

「導師は、『人間の究極の幸せは、人に愛されること、人にほめられること、人の役に立つこと、人から必要とされること、の4つです。働くことによって愛以外の3つの幸せが得られるのですよ』と言われました。私は、その愛も一生懸命働くことによって得られるものだと思う」

この4つは、まさに社会的な生き物である人間の欲求そのものです。そしてこれらを実感する場所の一つが「職場」であり、そのなかで最も大きな影響力をもつのが「上司」といえます。 労働時間の短縮のためには、これまでの業務を根底から見直し、標準化、平準化、多能工化、IT化といった、ドラスティックな改革が必要となるでしょう。

そして、もう一つの改革として忘れてならないのが、「上司の意識改革」です。

部下に対する深い関心と、部下の成長を惜しみなく支援する粘り腰と伴走力、部下を厳しく温かく鍛え、部下を引き上げていく度量等々。

これらは、自分の手柄、自分の評価に汲々としている上司ができるわけがありません。上司としてどのように部下と向き合わなくてはならないのか、上司として何が足りないのか。まずそこを知ることが必要です。そして、不足している知識やスキルを学び、上司自身が成長し続けることが大切です。

すべての社員が仕事を通じて輝くこと、その追求に「働き方改革」の本質があると思います。新年度の教育計画を立案するこの時期、「働き方改革」を助けるもう一つの改革として、部下をもつ上司の力量を上げる教育投資にも、しっかり力を入れていただきたいと思います。
 

教育研修・人材育成

筆者紹介

アタックスグループ パートナー
株式会社アタックス・ヒューマン・コンサルティング 代表取締役
中小企業診断士 北村 信貴子
1963年生まれ。中小企業診断士、産業カウンセラー、BCS認定ビジネスコーチ。大手食品メーカー勤務後、アタックス入社。中堅中小企業を対象に経営診断や人事制度設計運用・人材育成業務に従事。現在は、後継者育成、管理者教育、女性リーダー育成を中心に実践型の教育訓練・能力開発に特に注力。講演・セミナー実績多数。受講者との対話を通じて理解を深めていく迫力ある指導には定評がある。
北村信貴子の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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