令和8年度税制改正大綱のポイントと背景
新年あけましておめでとうございます。2026年、最初のコラムは「令和8年度税制改正」について取り上げます。
2025年12月19日「令和8年度の与党税制改正大綱」が公表されました。
今回の大綱では、
- 物価高への対応
- 強い経済の実現に向けた対応
- 地方の伸びしろの活用・暮らしの安定
- 公平かつ円滑な納税のための環境整備
- 自動車関係諸税の総合的な見直し
- 防衛力強化に係る財源確保のための税制措置
- 揮発油税等の当分の間税率廃止及びいわゆる教育無償化に係る財源確保
と、多岐にわたる内容となっています。
このうち令和8年度改正で、オーナー社長をはじめとする富裕層に影響があるものとしては、
- 貸付用不動産の評価見直し
- ミニマムタックス(極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置)課税の拡充
- ふるさと納税の定額上限(給与収入1億円相当)の設置
などが挙げられます。
今回は、これらの中から「貸付用不動産の評価見直し」について、詳しく見ていきたいと思います。
今回の改正内容を見る前に、まず「どのような点が問題となり見直す必要があるのか」という点について整理しておきたいと思います。
不動産は、「実際の購入金額(時価)」に比べて、相続税や贈与税の計算に用いられる評価額(相続税評価額)が低く設定されています。
そのため、不動産を購入することで財産を圧縮でき、結果として、相続税を減らすことができます。
具体的には、土地の相続税評価額は路線価により時価の8割程度、建物は固定資産税評価として7割程度で評価されます。
さらに、貸付用不動産の場合には時価のおおよそ5割~6割程度の評価となります。
このような時価と相続税評価額の乖離を活用した不動産による相続税対策は、長年行われてきましたが、その行き過ぎを是正するため、これまでも段階的に規制が加えられてきました。
過去の改正・判例と今回の変更点
主な改正・判例として、次のようなものがあります。
1989年4月1日以後の負担付贈与の評価見直し
借入金付きで不動産を贈与する「負担付贈与」については、相続税評価額ではなく時価による評価が行われることとなりました。
例えば、時価1億円、相続税評価額6,000万円の不動産を、借入金6,000万円と併せて贈与した場合、
=贈与額0円
とはならず、
=4,000万円の贈与
として課税されます。
2018年4月1日以後に開始した相続における規制
相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供した宅地は、小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等として50%の評価減)の対象外となりました。
2022年4月19日最高裁判決
マンションの相続税評価額について、財産評価基本通達ではなく鑑定評価を用いることが妥当とされ、国側が勝訴しました。
2024年1月1日以後の分譲マンション評価の見直し
この判決を受け、いわゆる「タワマン節税」に代表される過度な財産圧縮を抑制するため、分譲マンションの相続税評価方法が見直されました。
このような流れを踏まえたうえで、今回の令和8年度税制改正において新たに評価見直しの対象となるのが、次の2点です。
2027年1月1日以後に開始した相続
相続開始前5年以内に取得した貸付用不動産は、原則として時価で評価することとされます(時価の8割評価が認められるケースもあり)。
2027年1月1日以後に開始した相続
不動産小口化商品についても、相続税評価額ではなく時価評価が行われます。
※不動産小口化商品とは、1つの不動産を複数人で共同出資できるよう細かく分割(小口化)した商品で、投資額に応じた収入や売却益、財産圧縮効果を期待できるものです。
不動産を使った相続対策はどう変わるか

これまで、多額な財産圧縮を期待して貸付用不動産を1棟、あるいは複数棟購入するケースや、管理の手間が少なく投資額の調整もしやすい手軽な不動産小口化商品を活用するケースも増えてきていたと思います。
詳細な取り扱いについては、今後の公表を待つことになりますが、この改正により、不動産の時価と相続税評価額の乖離を利用した相続税対策の効果は、今後薄まっていくと考えられます。
そのため、今後の不動産活用においては、節税効果のみを目的とするのではなく、資産運用の観点も踏まえた検討が、これまで以上に重要になってくるでしょう。
私たちは、「社長の最良の相談相手」として、皆様の状況に寄り添いながら、最適な選択ができるよう全力でサポートさせていただきます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
筆者紹介

- アタックスグループ 代表パートナー
- アタックス税理士法人 代表社員 税理士 村井 克行
- アタックスグループ入社以来、長い歴史をもつ税務部門において、組織再編や相続対策など最新の税法・会社法の知識を生かした永続企業のための総合的な支援業務に従事。その実務家としての誠実で緻密な仕事ぶりは、多くのクライアントやオーナー経営者から、高い評価を得ている。
