トップ保険サービス株式会社~北九州市の5方良し経営のモデル

坂本光司の快進撃企業レポート 経営

福岡県北九州市に「トップ保険サービス株式会社」という社名の社員数26名の中小企業があります。創業は1926年で、正に100年企業ですが、今日の業態になったのは、法人成した1994年です。

主事業は、社名の通り、生命保険や損害保険の代理店業務です。こういうと、全国どこにでもある保険代理店ですかと言われそうですが、同社の経営は全く違うのです。

どこが大きく違うのかというと、保険代理店は、特定の保険会社の代理店というのが一般的ですが、同社は、国内の代表的保険会社のほぼ全ての代理店なのです。

それは、社長は、社員ファースト、社員と会社は、顧客ファーストを実践するため、顧客にとっての最善・最適な保険サービスを提供するためなのです。

よく見られる、顧客にはわからないのですが、手数料の多い保険会社の保険を提案する代理店も少なからずありますが、同社は徹底した顧客志向なのです。

こうした姿勢を貫いていることもあり、顧客の信頼は厚く、業界では、格差・淘汰・選別の中、代理店数も激減している中、同社の業績は抜群なのです。

同社における本コーナーの「5方良し経営」は随所で見られますが、ここでは、社員やその家族に関することと、障がい者施設への発注による間接雇用に関して述べます。

まず、社員とその家族に関することですが、一般的な保険代理店とは大きく異なる経営が実践されています。

例えば、この業界では、一般的に、営業ノルマ・業績ノルマが課せられ、人により、その給与は大きく異なりますが、同社は、ノルマと言われるものは一切ないのです。

ですから、ほぼ全社員が、同社の名目定年年齢である65歳までは給与が上がり続けます。

それどころか、同社では、社員に負担のかかる新規開拓を禁止しているのです。ですから、同社の顧客になりたい人は、同社が信頼する既存客からの紹介状が必要不可欠なのです。

つまり、同社では個人戦を避け、トップ保険サービスというチーム戦で大家族的経営を実践しているのです。それでいて、同社の顧客数も売上高も30年以上右肩上がりであり、社員の給与は業界平均をはるか上回っているのです。

私は良く「真の営業は営業をしない営業のことをいう」と言いますが、正にそれを証明する会社なのです。

加えて言えば、同社は社員教育にもすこぶる熱心で、社員一人当たりの年間研修費は25万円と、中小企業の平均の1万円をはるか上回っています。

そればかりか、同社では、社員主体で早朝6時45分から「自主勉強会」が開催されているのですが、そのテキストは「論語と算盤、五輪の書、日本書紀、学問のススメ、ドラッカー選書」等であります。

こうした経営の考え方・進め方を、社員満足度調査から見ると、「満足し幸せを実感している」と回答した人が97%となっており、社員の圧倒的な支持を受けていることが示されています。

同社では、こうしたノルマなし経営に加え、大家族的経営をブレず実践するため、社員とその家族のために、多種多様な法定外福利厚生制度も実施しています。

ここでは、その中から読者の多くが、いつの日か実施して欲しい社員の家族のための制度を1つだけ紹介します。

それは、病気等で社員が就労継続困難になってしまった場合のための法定外福利厚生制度です。同社では、万が一、社員がそうなった場合には、同社の名目定年年齢である65歳まで現給を支給し続けるという制度です。

例えば、30歳で不治の病となり就労継続困難となってしまった社員には、会社に一日も出社しないばかりか、在宅勤務もしなくても、35年間、30歳の時の年収を月割計算して本人と家族に手渡すというものです。

加えていえば、病気や事故・事件等で、就労継続困難どころか、社員が亡くなった場合には、会社が全額負担し、受取人は全額社員の家族とする生命保険にも全社員が加入しているのです。ちなみに、その受け取り金額は3000万円といいます。

同社の取り組みでもう1つ紹介したいのは、地域貢献や社会貢献活動です。これも地域清掃や様々な慈善団体への寄付等、様々な取り組みをしていますが、紙面の都合で、ここでは1つだけ、障がい者施設の支援に関して説明します。

同社は、社員数26名で、障がい者の直接雇用は、現在していませんが、社会の雇用を増加させるための「間接雇用」には積極的に取り組んでいます。

つまり、障がい者施設へ安定的に発注をしたり、障がい者施設で生産販売しているものを安定的かつ継続的な購入です。

ノベルティー商品や焼き菓子等の購入、さらには昼食弁当の購入等です。昼食弁当は、毎週月曜日に全社員分26個を1年間契約購入しているのです。

毎週月曜日は、障がい者施設のスタッフが持参してくれた昼食弁当を、トップ保険サービスの全社員が揃って食べるのが慣例なのです。

ちなみに、同社の障がい者施設からの年間購入金額は2025年の場合は218万円です。

周知のように、比較的重度の障がいのある人々が働くB型と言われる施設の平均年収は20万円ですので、その意味では、トップ保険サービスの年間購入額は、重度障がい者20名の雇用の創出に匹敵する金額です。

こうした五方良しの経営をブレず本気で実践する会社が多数派にすることが私たち学会の重要な使命と考えています。

 

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筆者紹介

坂本光司

アタックスグループ 顧問
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長  坂本 光司(さかもとこうじ)
1947年 静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。

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