賃上げ時代に直面する経営の現実
経営者の皆さまとお話しする中で、最も多く聞かれるテーマが「賃上げへの対応」です。
人手不足が常態化するなか、人材確保や定着のために、賃上げは避けて通れない課題となっています。
一方で、原材料費や外注費、エネルギーコスト、物流費の上昇も続いています。
コスト上昇分を販売価格へ転嫁したくても、取引先との関係や競争環境の中で十分に実現できず、「利益が残らない」と悩む企業も増えています。
値上げが徐々に進んでいる業界でも、上昇分をすべて吸収できている企業は多くなく、「本当は賃上げしたいが、利益の見通しが立たず踏み切れない」という声も少なくないのが実情です。
賃上げ判断は「利益計画」から始める
こうした環境下で重要なのは、賃上げを世の中との比較や前年踏襲で決めるのではなく、利益計画に基づいて判断することです。
その第一歩として有効なのが、財務シミュレーションの実施です。
賃上げを行った場合に利益がどの程度減少するのか、あるいは売上や付加価値をどれだけ高めれば吸収できるのかを数字で確認することで、現実的な判断が可能になります。
ここで重要なのは、単に数字を当てはめるのではなく、今後の市場環境や業界動向、コスト上昇の見通しといった外部環境予測と、自社の強み・弱みなどの内部要因の両方を踏まえてシミュレーションを行うことです。
将来起こり得る環境変化を想定し、自社の競争力や改善余地を整理したうえで検証することで、より実効性の高い計画の土台が見えてきます。
財務シミュレーションと人財生産性の視点
ここでいう財務シミュレーションとは、単なる損益の試算ではありません。
PL(損益計算書)、BS(貸借対照表)、CF(キャッシュ・フロー計算)、さらには、各種経営指標までを含めた総合的な検証を指します。
利益だけでなく、財務体質や資金繰りへの影響まで確認することで、より現実的な経営判断が可能になります。
また、このシミュレーションには生産性の視点を必ず組み込みます。
その際、重要な指標となるのが「人財生産性」です。
人財生産性は一般に「付加価値 ÷ 人件費」で表されます。賃上げを進めるためには、この人財生産性を少なくとも維持、できれば向上させていくことが不可欠です。
つまり、一人当たり人件費を引き上げるためには、人財生産性を一定水準に保ちながら、一人当たりが生み出す付加価値を高めていく必要があります。
営業力の強化・業務プロセスの改善による付加価値額・付加価値率の向上、人財育成による業務効率の改善などを織り込みながら検証することで、「どこまで賃上げが可能か」「そのために何を変える必要があるか」がより具体的に見えてきます。
そして、シミュレーション結果を基に自社の収益構造を改めて整理し、課題を明確にします。
そのうえで、必要な利益水準から逆算した利益計画を策定し、具体的な改善テーマや行動内容に落とし込んだアクションプランへと展開していくことが重要です。
利益は「結果」ではなく「計画で創る」

計画とは単なる数字の目標ではなく、「何を変えるか」を具体化するプロセスでもあります。
さらに、月次で計画と実績を比較し、経常利益の増減要因を確認しながら行動を修正していくことが、計画経営の本質といえます。
早期に課題を把握し、打ち手を柔軟に見直せる企業ほど、環境変化への対応力も高まっていきます。
忘れてはならないのは、「賃上げを実現するためには利益が必要である」というシンプルな事実です。
利益は結果として余るものではなく、自社の持続的成長のために確保すべき経営目標です。
自社にとって必要な利益水準を明確にし、それを計画的に実現していくことが、従業員の安心と会社の永続的な発展の両立につながります。
賃上げ時代に求められているのは、「利益は結果ではなく、計画によって創り出す」という経営姿勢です。
アタックスグループでは、利益計画づくりをご支援しています。ぜひこの機会に、自社の利益計画と実績管理の仕組みを見直しましょう。
ご相談はいつでも承っておりますので、こちらからお気軽にお問い合わせください。
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筆者紹介

- 株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 執行役員 土屋 元樹
- 1974年長野県生まれ。大手メーカー(上場会社)勤務を経て、アタックスに入社。中堅・中小企業を中心に、中期経営計画の策定、利益計画の策定、経営改善計画の策定、業績管理制度の構築・運用支援、経理業務改善、月次業績モニタリング支援、企業再生支援等に従事。各支援を通じて、経営者の片腕となる経営幹部の育成に情熱を燃やす。
