長岡塗装店~3K・5Kの現場を変えた経営改革

経営

島根県松江市に株式会社長岡塗装店という社名の建物や塀等への塗装を専門とする中小企業がある。塗装業界は一般的に3Kとか5K職場などといわれ、若者や女性の入職不足や、高い離職率、さらには従業員の高齢化、その結果としての、従業員のモチベーションの低下に悩んでいる企業が多い。

こうした業界にあって、見事、こうした問題をことごとくクリアーし、成長発展している企業が今回取り上げた長岡塗装店である。

今から20年ほど前までは、当社も御多分に漏れず、多くの問題を抱えた、ごくごく普通の塗装業であった。しかしながら、事業承継した娘夫婦(娘婿が社長)は、「このままではじり貧となりやがて潰れる…」と危機意識を持ち、経営改革に取り組んでいった。

二人が強く問題意識を持ったことは、

1つ目は、若者や女性の入職不足や離職の増大は外部の問題ではなく自社が若者や女性にとって、働く場所として、魅力がないからだ。
2つ目は、なぜ体中にノウハウが詰まった、働ける・働きたいと思っている高齢者を定年だからという理由で離職させてしまっているのか…。
であった。

そして、二人は全社員と議論を重ね、若者や女性、さらには高齢者が働きやすい・働きたくなる職場づくりを、できるものから順に、次から次に実行していく。ちなみに、それ以降、新たに会社がつくったり、改善した福利厚生制度は20種類を超す。その一部を紹介すると、

1.30分単位での子供も看護休暇(有給休暇とは別)
2.本人または配偶者の出産祝い金(10万円)
3.認可・無認可を問わず保育料の三分の一の補助
4.育児や看護のための始業・終業時間の繰り上げ・繰り下げ
5.社員の家族の介護サービス利用費用の三分の一の補助
6.70歳までの継続雇用制度
7.リラクゼーションルームと機器の整備
8.技能士等の国家資格取得の経費の補助
9.全社員の講演会・セミナー等への参加奨励
等である。

この結果、20年たった今、従業員は倍増するとともに、離職率は、かつての30%以上が実質ゼロ、女性社員比率は14%が50%、子供がいる社員がゼロが三分の一、さらには、取得した国家資格(全社員)は23件が66件などにまで高まっている。

こうしてみると、企業問題の本質は業種や規模ではなく、人財、とりわけ経営の考え方・進め方こそが、本質問題ということがわかる。

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筆者紹介

坂本光司

アタックスグループ 顧問
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長  坂本 光司(さかもとこうじ)
1947年 静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。

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