オリオン機械~社員と家族のために自家商品をつくり続ける会社

経営

JR長野駅から車で30分位走ったのどかな田園風景の見える場所に人口約5万人の須坂市がある。須坂市はモノづくりのまちとして富に有名で、世界的な中小企業も多い。

その1社が「オリオン機械」という社名の中堅企業である。主製品はエアードライヤーや業務用ヒーターさらには酪農機器で、その生産アイテムは数100種類に及ぶ。そればかりか、当社が世界一のシェアを誇る商品も多々ある。

当社の創業は今から65年前の1946年(昭和21年)現社長の大田氏の実父が下請会社としてスタートしている。しかしながら、「下請は永遠にやる経営ではない…」と自家商品づくりに取り組んだ。

その結果、創業後11年目の1957年(昭和32年)、待望の自家商品を開発し、全国に販売している。当社が最初に手掛けた自家商品は、酪農市場向け商品である。より具体的にいえば、ミルクカーである。そして1959年(昭和34年)には牛乳用ユニットクーラー等も開発販売している。

以後も、まさに自家商品の開発の歴史と言って良いほど、新商品開発に注力している。

この結果、年々企業規模を拡大し、現在では、本社の社員数が、約600名、国内外のグループ会社34社を含めた社員総数は1,670名と、今や須坂市の最大企業にまで成長発展している。

肝心のその業績もすこぶる高く、直近5年間でみても、その売上高経常利益率は全て5%以上という高業績企業である。

当社のこれまでの成長発展の要因は多々あるが、その最大の要因は、創業して以来一貫して人本経営、つまり「社員第一主義経営」と「市場創造経営」を貫いてきたからである。

あえて言えば、当社のあくなき自家商品づくり・新商品づくりは、社員とその家族の命と生活を守るための活動であったと言える。

事実、当社の最大危機であった1964年(昭和39年)不況の折も、誰1人としてリストラせず、ワークシェアリングや役員給料のカットなどにより乗り切っている。当社の経営には、リストラという言葉は存在しないのである。

当社が社員満足度を高めるため実施している諸施策は多々あるが、その1 つが、「社員満足度調査」である。この調査は年1 回実施されているもので、全社員が対象である。単に給料や処遇の満足・不満足を聞くのではなく、福利厚生や上司、企業の社会貢献、仕入先との関係性等についても意見を求めている。そしてその結果は、全て全社員にフィードバックしている。こうしたこともあり、当社の離職率は限りなくゼロに近い。

先日も当社を訪問した折、工場の隅から隅まで見させて頂いたが、現場で働く社員の愛社心、モチベーションの高さは直ぐに理解できた。

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筆者紹介

坂本光司

アタックスグループ 顧問
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長  坂本 光司(さかもとこうじ)
1947年 静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。

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