業界常識を覆すプレハブ型配管システム -株式会社カワトT.P.C.

経営

西浦道明のメルマガ 2022年8月

2014年から、当メルマガでは自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している中堅中小企業をご紹介している。

連載96回目の今回は、山口県岩国市で、マンション、アパート等の共同住宅向けの給湯・給水プレハブユニットの企画および製作と水栓金具や半導体部品、航空機部品などの精密機械部品の加工を行う株式会社カワトT.P.C. (以下、K社)の池クジラぶりを見ていきたい。

K社は、1989年、現社長の川戸俊彦氏(以下、K氏)が創業した。

K氏は、これまでの世の中にない給水・給湯システムを開発しようと1991年に着手し、1995年、K社の独自ブランドとして給水・給湯システムの販売を開始した。

このプレハブ型の配管システムは、それまで職人が建築現場で金属管を加工・接合していたものを、軽量の樹脂製パイプを使い、あらかじめ自社工場で配管キットを製造する、組立加工システムだった。

この手法により、作業時間はこれまでのほぼ半分に短縮され、工事費も約3割削減することができた。

また、K社はパイプの端材を粉砕し、リサイクル樹脂としてコンクリートメーカー等に提供することで、工場や現場で発生する廃棄物及び廃棄処理コストの大幅な削減にもつなげた。

この結果、業界でも多くの注目を集め、首都圏マンション向け販売シェアは3割超と全国トップになった。

マンションだけでなく大規模商業施設、さらには東京オリンピック2020の選手村でも採用され、需要はますます拡大している。

一方、このシステム導入は、女性社員の雇用という新たな効果をもたらした。

K社の立地する岩国市は、もともと女性が働きやすい職場があまりなかった。

そこに、K社が未経験者でも作業可能な組立加工システムを構築したことで、販売開始した1995年、人材を募集した当初の応募数は男女半分ずつだったが、4~5年後には圧倒的に女性が多くなった。

現在、女性社員が全体の7割を占め、プレハブ配管の企画・生産加工部門の女性は9割となっている。

K社は、また、働きやすい環境・仕組づくりにも取り組んできた。

まず、3 歳までの育児休業制度、時間単位の看護・介護休暇制度、小学校就学前までの短時間勤務制度に取り組んだ。

個々の社員の事情に応じ、時短正社員・パート社員の選択を可能にした。
学校行事や通院等に気軽に利用できる15分単位の外出制度なども導入していった。

さらに、K社はグループ制を取り入れ、現在、グループ数は58である。

ちなみに、グループリーダーの半数は女性であり、女性だけのグループも半数以上ある。

各グループは5人から10人で、グループリーダーが品質やリスクを管理し、毎月の決算では、作業時間、加工費、経費、収支などを掌握している。

作業は短時間集中型となり生産性が高まり、品質も向上した。

同時に、かつては、残業が月に40~50時間あったが、今では、多い月でも10時間程度に激減し、9割以上の社員が定時で帰宅できている。

社員一人ひとりが、「自分の給料は自分で稼ぐ」という経営への参加意識を持つようになった。

K社は、これまでの業界常識を覆す仕組みを開発し、地域の働く意欲のある女性を活用することで高い評価を得てきた。

K社は未経験者でも作業可能な、これまでになかったプレハブ型配管システム市場(池)のクジラとなっている。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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