なぜ金沢のソウルフードになれたのか -株式会社芝寿し

経営

西浦道明のメルマガ 2022年4月

2014年から、当メルマガでは自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している中堅中小企業をご紹介している。

連載92回目の今回は、石川県金沢市で、寿し・弁当の製造販売を行う株式会社芝寿し(以下、S社)の池クジラぶりを見ていきたい。

S社は、1947年5月、現社長の祖父、梶谷忠司氏(以下、K氏)が創業した。

K氏は元来寿し職人ではない。

1955年に東芝のショールームを経営していたK氏は、電気炊飯器を売るため、実際にご飯を炊いてみせたところ、飛ぶように売れた。

しかし、毎回炊き立てのお米が残るのをもったいないと思い悩んだ。

そうこうするうち、金沢で昔から祭りなど“ハレの日”に「押し寿し」をつくり周囲にふるまう風習があったことから、「寿司」という発想を思いついた。

現在のS社の代表的な商品は、押し寿しを笹の葉でくるんだ「笹寿し」だ。

開発のきっかけは、K氏が神社参道の駄菓子屋で売られていた笹餅をヒントに、餅をご飯に置き換え、いつでも食べることができるようにしたものだ。

今では石川・富山・福井の北陸3県だけでも年間1100万個以上を製造する「金沢のソウルフード」までになっている。

S社の笹寿しが、ここまで支持を集めているのは素材にこだわっているからだ。

まず、米は、契約農家で有機肥料栽培された専用米と北陸の地で採れた良質の米を使用している。

また水は、霊峰白山の伏流水を地下100メートルから汲み上げた水。

酢は、白山の麓から流れる清らかな水で、丹精込めて醸成された酢造メーカーで作られる専用酢。

そして魚も、新鮮なうちに自社でおろし、専用の酢と天然塩でしめるなど徹底している。

また、S社の寿し・弁当の販売方法にも特徴がある。

先に自分の利益を取らず、お客様がどうすれば喜ぶかを優先する「先義後利」の考えから、注文した弁当の「雨天キャンセルOK」を採用したことだ。

通常、弁当は、早朝4時ぐらいから作り始め、キャンセルがあれば6時~6時半に連絡が入るが、この間に作り終えた弁当は店舗で販売することにした。

これが口コミで広がり、注文の来る範囲が金沢市内から北陸3県までになった。

さらにこの味を全国に届けるため、現在、新たな取り組みを行っている。

それが「冷凍寿し」だ。
約2年かけて研究開発した。

専用の米を使いシャリの旨味を損なわないようにしている。

また酢も老舗の酢蔵と「冷凍に耐性のある酢」を共同開発した。

凍りにくくした酢で、解凍後もしっとりとしたシャリの食感とまろやかな味わいを楽しめる。

さらに、握りたて感を生み出すため、3Dフリーザを導入した。

氷結晶が非常に微細になるため、食材の劣化が抑えられ、水分をほとんど奪わないため、ごはんの炊き立て感とネタの新鮮さがキープされている。

さらに、お客様には、冷凍寿し専用の冷凍庫をレンタルし、余分な負担をなくした。

S社は、地元に根付いていた食文化を継承・発展させ、地域のお客様からの満足度を高めた。

さらに、冷凍寿しを開発することで、多くのお客様の問題解決に貢献し、高い評価を得てきた。

S社は、金沢のソウルフードまでになった押し寿し市場(池)のクジラとなっている。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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