日本でも最大の「授産施設」 -社会福祉法人北海道光生舎

経営

西浦道明のメルマガ 2022年2月

2014年から、当メルマガでは自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している中堅中小企業をご紹介している。

連載90回目の今回は、北海道赤平市で、ホームクリーニング、ホテルリネンサプライ、ダイアパー(おむつ)、病院寝具、ダストコントロールを行う社会福祉法人北海道光生舎(以下、H社)の池クジラぶりを見ていきたい。

H社は、1956年、現理事長の父、高江常男(以下、T氏)が赤平市でドライクリーニング工場を創業したのが始まり。

現在では、赤平市を中心に、札幌市・芦別市・歌志内市に拠点を置き、全部で23の施設と20のグループホームを展開する大規模な法人に発展している。

T氏は、小学校の時に、遊んでいた竹とんぼが目にあたり右目を失明した。

さらに送電工事に携わっていた17歳の時に3,000ボルトの高圧電線で感電し両腕を失った。

つらい療養のあと、必死に勉強に勤しみ、文学で身をたてようと活動していたところ、地方紙の新聞記者として職を得た。

しかし、口にペンをくわえて取材に歩くなか、炭鉱事故でケガをして仕事が見つからない障がい者の存在を知る。

そこで、彼らの仕事探しに奔走したが見つからなかった。

それなら、「自分たちで働く場をつくろう」とH社を立ち上げたのだ。

T氏がクリーニング業を主業務にした理由は3つある。

1つ目は、当時、家内産業が多く、機械化して生産性をあげれば、障がいを持った人でも、十分通用すると思われたこと。

2つ目は、外交から洗浄、仕上げ、包装、配達、集金など、仕事を細分化すれば、障がいの程度と内容次第で分担できること。

そして3つ目は、これから生活水準が高まれば、衣料品も増えて、クリーニングの需要が高まると予測されたことであった。

H社は、社会福祉法人でありながら、一般企業と同様、ビジネスの視点で経営をしている。

通常、障害者総合支援法で定められた就労継続支援B型の事業所は単式簿記を採用しているが、H社は創業時から複式簿記の企業会計を採用してきた。

これにより、国の助成金に頼らず資金を借り入れ、設備投資で生産性を上げ、成長してきた。

T氏は、この考えを「企業授産」と表現した。

その結果、H社は、日本でも最大の「授産施設」となり、道内トップクラスのクリーニング業に発展した。

さらに、リネンサプライ事業・リースキン事業・ユニフォームレンタル事業なども展開し、今や、キレイを届けるクリーニングの専門商社として成長している。

H社は、これまで、女性スタッフだけの宅配クリーニング「CoCo」など、様々なサービスを開発してきたが、多くは一般社員の声から始まっている。

それは、自分たちの仕事は「お客様と障がい者雇用」のためであり、次の世代やお客様の満足に繋がるという高い意識があるからだ。

また、斜陽産業の中にあって成長発展し続けているのはIT活用に積極的な点も大きい。

業界の中で早くからオリジナルアプリを制作し、スマートフォンを活用して業務効率化を図ったり、お客様の会員証を携帯アプリにしたり、無人店舗でのお預けや引取りシステムなどに取り組んできた。

H社は、障がい者雇用にかこつけて情けや同情で仕事をいただくのではなく、常に技術の革新と生産性の向上に努め、あくまでもお客様が求める高い品質をリーズナブルな価格でお届けし、高い評価を得てきた。

H社は、企業授産の理念を掲げて一般企業と堂々と渡り合う「授産施設」(池)のクジラとなった。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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