業界では非常識な住まいのお助け隊 -島根電工株式会社

経営

西浦道明のメルマガ 2021年5月

2014年から、当メルマガでは自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している中堅中小企業をご紹介している。

連載81回目の今回は、島根県松江市で、電気設備工事、通信設備工事、給排水衛生設備工事、空調設備工事などを行う島根電工株式会社(以下、S社)の池クジラぶりを見ていきたい。

1956年、S社は有限会社島根電気工事会社として設立した。

現社長の荒木恭司氏(以下、A氏)は1972年入社。
2010年に代表取締役社長に就任した。

元々S社は、県や市が所有する公共施設の電気や給排水、空調や通信設備工事などをメインとしていた。

しかし、1990年以降、売上の90%を占める公共工事が大幅に削減され、S社の業況は一変した。

この環境変化に適応すべく、A氏は、社長に就任する前から、設備工事業界では非常識だった、個人の住まいの困り事の解決という社会的課題の解決に応じることが生き残り策になると考えた。

しかし、「大きな仕事」にプライドを持つ社内の危機意識は薄く、細々とした民間の業務には反発をした。

孤立無援に近い状況の中、設備工事業からサービス業への意識転換を図る決意をしたA氏は、2001年、一般家庭向けの住まいのお助け隊を創り、改革を進めた。

その中で、工事ごとに内容と収支がわかるデータ取り続けたところ、小口であっても十分な収益が獲得できることがわかった。

また、2006年には、住まいのお助け隊を取り取り上げたユニークなCMを公開した。

この手作り感のあるCMをきっかけに、「S社は大きな工事をやる会社」というイメージが払拭され、問合せが相次ぐようになった。

この結果、社風が一変し、自ら提案して売り上げを開発することが当たり前化し、全売り上げの半分近くがこうした開発売り上げになり、全体としても、バブル期の3倍の売り上げにまで成長した。

小口工事を始めて以降、営業担当社員の残業が増えたが、原因は見積もりの手間だった。

これを改革しようと考えたA氏は、見積書や請求書を作成できる携帯情報処理端末「サットくん」を開発し、社員の生産性が一挙に高まった。

また、過去の工事や販売の履歴を一元的に管理する「お客様サービスシステム」も開発・活用し、より迅速かつ正確に、修理や故障の対応が取れるようにした。

S社は、元々丁寧な仕事ぶりが特徴だったこともあり、顧客リピート率は90%以上となり、多くのファンを得るようになった。

また、住まいのお助け隊を始めて以降、顧客と直接接する機会が多くなり、顧客の反応がダイレクトに社員に伝わり、さらに、住まいの「困り事」を即解決することで、顧客から大いに喜ばれ、感謝されるようになった。

お蔭で、社員の働きがいが大いに増大し、いつしか、小さな仕事をバカにする社員はいなくなった。

このように、社員が自律的に行う仕事が顧客から感謝される結果、社員がますます頑張っていい仕事をすることで好循環が生まれ、エリアの小さな困り事を次々と解決している。

S社は、設備工事業から、期待を超える感動を提供するサービス業への意識転換を図ることに成功し、最近の設備工事業ランキングでは、受注高(電気、管・空調)・完工高(電気、管・空調)ともに、山陰エリアNo.1に成長している。

S社は、島根・鳥取という山陰エリアにおける、住まいのお助け隊という市場(池)のクジラとなっている。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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