経営者自らが「動く理念」をめざす -株式会社アワーズ

経営

西浦道明のメルマガ 2021年4月

2014年から、当メルマガでは自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している中堅中小企業をご紹介している。

連載80回目の今回は、和歌山県西牟婁郡白浜町にあるアドベンチャーワールドの経営を行う、大阪府松原市の株式会社アワーズ(以下、A社)の池クジラぶりを見ていきたい。

A社は、1977年に設立し、1978年、動物園・水族館・遊園地を併設する、全国に類を見ないテーマパークをオープンさせた。

それ以来、累計4,000万人以上の入園者が、敷地面積80万平方メートルを超える同園を訪れている。

現社長の山本雅史氏(以下、Y氏)の祖父が初代、父親が2代目、そして2015年、Y氏が3代目社長に就任した。

A社は、Y氏が社長に就任して以来、「理念経営」を推進するようにした点が大きな特徴である。

Y氏は、立地の良さや利便性で劣る同園に多くの来園者を呼び込むには、父からの「満足を超える感動・感激を提供する」という考えが軸になると考えた。

そして、様々な試行錯誤を経た末に、それを実現するためには、全ての行動の明確な判断基準となる「企業理念」を設定し、まずは自らが「動く理念」となり社内に浸透させることで、働く社員一人ひとりが自ら考えて行動できるための仕組みづくりをすることが大切だという結論を得た。

Y氏は、企業理念をゼロから作るのではなく、すでに長い歴史を持っているA社において大切にされてきたワードから「こころでときを創るSmileカンパニー」 という言葉を選択し再定義をした。

一方、社員に対してはそれを強制することはない、と明言したが、社員に一つだけお願いをした。

それは「5年後10年後のことを企業理念にもとづき考える時間をつくってください。自分が所属するセクションの将来のあるべき姿を考えてください」ということである。

それはビジョンミーティングという研修的な位置づけで実行され、理念共有の仕組みとして理念に触れる機会になっている。

この結果、社員たちは、理念から外れない限り、自主的に判断して行動でき、やらされ感なく仕事に取り組めるようになった。

そして、多くのゲストに感動してもらう喜び・幸せを日々感じることができるようになった。

今や、毎年、季節毎にライブやアトラクションを刷新している。

また、動物と触れ合うウエディングプランも社員たちが開発した。

障がいのあるお子様とその家族を招待してパークを楽しんでもらう取り組みもやっている。

このように、社員たちによって、同園ならではの目新しい企画が、次々と生み出され続けている。

さらに理念経営の効果は、今働いている社員のみならず、未来の社員にも確実に届いている。

すなわち、採用活動においてA社を志望する就活生が、「会社の理念に共感したから」と言って入社試験を受けてくれるようになっている。

「動物が好きだから」とか「テーマパークが好き」という志望動機も歓迎はするが、企業理念に対する共感が志望動機の理由になっていれば、ミスマッチは減り、新しく入る社員と企業の双方にとって大きなメリットとなる。

A社は、社員全員が「こころでときを創る」テーマパークを運営してきたことで、高い評価を得てきた。

A社は、わざわざ遠方から入園者を引き寄せる、動物園・水族館・遊園地を併設した全国に類を見ないテーマパーク(池)のクジラとなっている。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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