世界に打って出る「縁の下の力持ち」企業 -大和合金株式会社

経営

西浦道明のメルマガ 2019年12月

2014年から、当メルマガでは、自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している中堅中小企業をご紹介している。

連載64回目の今回は、埼玉県入間郡三芳町で、特殊銅合金の開発、製造、加工、販売を行なう大和合金株式会社(以下、Y社)の池クジラぶりを見ていきたい。

Y社は1941年、現社長萩野源次郎氏(以下、H氏)の祖父である創業者が特殊銅合金を開発した。

二代目の父は、国内でその用途や販売網を広げた。

そして三代目のH氏は、今、海外展開を進めている。

Y社の特殊銅合金は、自動車、航空機、半導体、鉄道、船舶、一般機械、光ファイバー海底ケーブル、熱核融合実験炉装置用材料、金型材料などに幅広く使用されている。

今やY社は、航空機の離着陸を支えるランディングギア部品について世界を代表する航空機メーカーからも高く評価され、グローバルニッチトップになる日も近い。

Y社がここまで成長して来れた理由の1つ目は、その受注体制にある。

一般に銅合金メーカーは、大手メーカーから図面や仕様書を受け取り、言われた通り製造を行う受け身の受注体制に甘んずることが多い。

ところが、Y社は、常に新たな技術開発に挑戦し、海外の幅広い先端分野に積極的に関わり、提案型で受注を獲得する攻めの体制を取っている。

理由の2つ目は、社内生産体制だ。

Y社には、溶解、鋳造、熱間鍛造、熱処理、検査まで一貫生産が可能な自社工場がある。

そのため、Y社には、超短納期依頼、少量生産依頼、規格にはまらない細かなカスタマイズ依頼、特殊で超高性能なニーズ等への対応など、難易度の高い依頼が次々と舞い込む。

その結果、ますます特殊銅合金に関する最新情報・ノウハウが蓄積して行く。

そして理由の3つ目は、積極的な人財育成である。

Y社では、有名教授や大手メーカーの技術者を招聘して行う技術講習、ジョブローテーションを頻繁に行っての複眼的な視野の形成、さらに多能工化への取り組み。

さらに、禅と論語に学んでの人間力向上。

また、H氏自身も博士号を取得しているが、希望があれば大学院に通わせ博士号を取得させるなど、社員が誇りと自信を持って働く環境を整えている。

これがY社の技術レベルを向上させていることは論を待たない。

また人財採用でも、学校と企業を行き来しながら座学と実務訓練を長期に行う、ドイツ生まれの「デュアルシステム」を2013年から取り入れた。

会社見学をしながら、安全面に問題のない範囲でモノづくりの現場にも携わってもらう。

さらには、実習中はY社の社員懇親会や社員旅行、音楽会などの会社行事にも参加をしてもらい、親睦を深める。

その結果、Y社の新規学卒者の年間定着率は95%以上と高く、社内には家族的風土が生まれ、世代を超えた繋がりも生まれている。

Y社は、創業以来、特殊銅合金一筋に、絶え間ない技術開発と人間力向上に取り組み、世の中から高い評価を得てきた。

そしてY社は、特殊銅合金に関して他社には真似のできない高難易度の相談に乗り課題解決する、パイオニア企業という市場(池)のクジラとなっている。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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