よろず相談信用金庫 -但陽信用金庫

経営

西浦道明のメルマガ 2018年11月

2014年から、当メルマガでは自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している中堅中小企業をご紹介している。

連載51回目の今回は、兵庫県加古川市で、信用金庫法に基づく各種業務を行う但陽信用金庫(以下、T庫)の池クジラぶりを見ていきたい。

T庫は1926年6月10日に創業。

現在34店舗と81箇所の店外ATM(出張所)を有し、2017年度末の預金残高は7,323億円。

現理事長の桑田純一郎氏(以下、K氏)は1990年3月に理事長に就任した。

その後、現在までのT庫の実績推移を見ると、預金は1,870億円から7,323億円と3.92倍に。貸出金も1,453億円から2,861億円と1.97倍に。

そして店舗・出張所数も、22店舗から34店舗、学費振込のために設置した出張所も、6箇所から81箇所へと成長した。

K氏が理事長に就任した頃、金融自由化の流れの中で、「これからは運用の時代」と言われていた。

運用の時代が来れば、1,000万円以上の預金は、情報量の多い巨大金融機関に集まり運用される。

であれば、T庫の身の丈からすれば、同じ土俵では戦えない。

そこで、お財布がわりの金融機関として1000万円以下の預金が自然と集まるようにと考えた。

学費の引落し手数料を無料にし、学校の指定金融機関に徹したところ、これが大成功し、預金量は大幅に伸びた。

また、集めたお金の運用先は個人と中小零細企業と決めた。

メイン行となり小口融資に徹すればリスクを分散できるからだ。

そこで、気軽に何でも相談できる地元の「よろず相談信用金庫」をコンセプトにした。

T庫には、不動産業、弁護士、税理士等々、すべての業種のお客様がいる訳で、金融のことは勿論、個人の退職金や子供の教育費から、法人の経営相談、起業相談、事業承継など、多岐に渡る相談に乗ることができる。

このように「さしでる経営」を実践して来た。

K氏の家系はもともと山林業である。

山林は植えて40年経たないとお金にならない。

人のため、社会のために何をすべきかを考えていれば、利益は後からついてくる。

K氏は、社員第一主義を掲げ、全社員を家族(ファミリー)と捉えている。

それは不況のなかで生き残るには、規模拡大の追求ではなく、家族のような「絆・信頼」を築くことが一番大切なのだと考えているからだ。

そのために多くの施策を採用しているが、代表的なものとして、14日間の新入社員研修とその後の全寮制がある。

ここにはK氏自らが深く関わり、新入社員たちと徹底交流しているのだ。

T庫は、全社員一丸となって巨大な家族となり、地元目線のサービスや商品を提供して、お客様満足度を高めて来た。

気軽に何でも相談できる地元の「よろず相談信用金庫」という市場(池)を築き、その巨大なクジラとなっている。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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