マーケット・イン発想の病院 -医療法人鉄蕉会亀田総合病院

経営

西浦道明のメルマガ 2017年1月

2014年から当メルマガでは、自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している中堅中小企業をご紹介している。

連載29回目の今回は、千葉県鴨川市で高度先進医療を推進している医療法人鉄蕉会亀田総合病院(以下、K病院)の池クジラぶりを見ていきたい。

K病院は江戸時代初期より歴代漢方医を営んだが、江戸末期、亀田自證が長崎で蘭学を学んだ歴史と伝統を持つ。

現在、診療科目34科、1日平均外来患者3,000名、病床1,000床と、国内最大規模の総合病院に成長した。

2016年4月現在の社員数は3,375名。

東京から車で2時間以上かかる鴨川市は人口33,000人強だから、その1割が社員ということになる。

亀田信介院長(以下、K院長)は、地域住民のため高度先進医療に取り組むのは当然として、社員たちに「コミュニケーションスキルを習得させること」と「病院は特別という考え方を捨てさせること」に拘ってきた。

そもそも病院には患者様を選ぶ権利などない。

できることは、訪れた患者様のご要望を聴きそれに応えることのみだ。

ある患者様に喜ばれたサービスが、他の患者様にも喜ばれる保証はなく、すべてに一律に対応できるマニュアルなどあり得ない。

ところが、多くの病院はサービス業として当然のことをやっていない。

K病院は、「Always Say YES!!」を合言葉に患者様のあらゆるニーズに応え、患者様と協働して今日の医療サービスを築き上げてきた。

その一例を紹介すると、入院中の不安な状況にある患者様に安心してもらうため、常に自分が一番そばにいてほしい人をサポーターとして、全室個室の病棟では24時間面会可能にしている。

また重篤な患者様を収容するICU(集中治療室)には、サポーター向けのアメニティスペースを用意した。

さらに、そのサポーターが人ではなくペットであっても、ペットラウンジを他所に設けて面会可能にしている。

2005年竣工のKタワーという病棟では、全室個室で、ほぼすべてオーシャンビュー。
この眺めと解放感が患者様の不安を和らげる。

患者様に病院にいることを忘れさせる、「ホームライク」をテーマにしており、食事も一律に決められた入院食ではなく、主治医の許可があれば、アルコール飲料の摂取も可能だ。

さらに院内には、一流ホテル並みのレストランがあり、目の前で調理されるステーキ等を食べることができる。

その味も一流で、地元市民や観光客が食事目当てだけで訪れる。

また同タワー1Fにはコンシェルジュと呼ばれるスタッフが常に待機していて、各病室備えつけの端末を通して、患者様から届く買い物代行や宅配サービスの取り次ぎなどの依頼にも対応している。

K院長ら4人兄弟は、優れた医療関係者を集めて高度先進医療に取り組み、患者様の声を聴き参加型医療に取り組んできた結果、人口33,000人強しかいない地元が、医療品質・サービス面で他地域を圧倒してしまった。

今では、「遠方の患者様をわざわざ来院させる高い地域格差の病院」という市場(池)が出来上がり、K病院はその池クジラとなっている。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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