小よく大を制する -未来工業株式会社

経営

西浦道明のメルマガ 2015年10月

昨年来、当メルマガでは、自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している中小企業をご紹介している。

連載14回目の今回は、次々と新製品開発することで有名な、建築用電設資材メーカー、未来工業株式会社(以下、M社)の池クジラぶりを見ていきたい。

1965年創業のM社は、東芝・日立・三菱・パナソニックなど、並み居る超大企業が支配している電設資材市場に挑み、見事に自社独自の「池」を築き上げた。

これは、建設現場で働く職人のもとに足を運び、とにかく現場のニーズを集め、その仕事ぶりに着眼した結果から生まれた。

内装工事の前後で仕事をしなければならない電気工事職人は、例えば、壁紙を貼られてしまうと、どこにスイッチボックスがありどこにコンセントの穴を開ければいいのかに悩む。

M社が開発した、薄い金属を貼ってあるスイッチボックスのお蔭で、磁石で探せば、すぐにその場所が分かる。

これにより、M社は、電気スイッチやコンセントの裏側に埋め込む「スイッチボックス」の国内シェアで約7割に達し、「家の壁の裏側に設置する電設資材」という小さな市場(池)で、圧倒的にトップ企業(クジラ)になった。

ご多分に漏れず電設資材市場でも、巨大メーカーは、効率性の観点から大量の自社製品を一次問屋に販売し、二次問屋からエンドユーザーの職人までの川下は既存の流通構造に委ねている。

ところが、後発だった未来工業は、一次問屋とはあえて付き合わず、二次・三次問屋に直接アプローチしようと地方に営業所を展開し、電気工事職人の小さな不満を集めていった。

そして、それらを解消する新商品を次々と開発していった。

こうして現場職人を自社のファンにさせ、一次問屋が、未来工業製品を、値引き要求できないまま買わざるを得ない状況に持って行った。

M社の特許権、実用新案権、意匠権が、3500件を超えている。

また、電設資材と同じように、給排水設備やガス管を収納・保護するカバーなど、水道やガスの資材にも事業を展開し、今現在の製品点数は約2万点にまで及んでいる。

これらは、M社の、「よそと同じモノはつくらない」「全商品を差別化する」というポリシーから生まれているが、すべて「現場職人の声」がきっかけだった。

その意味でM社の「池」は、「現場職人の声を集約する仕組み」が出来上がった結果として創られたと言える。

とすれば、新商品開発によって「池のクジラ」となる一番の近道は、まずは伝統的な流通構造を無視して「エンドユーザーの声を集約する仕組み」を創り、そこから商品開発し、二次・三次問屋から一次問屋に遡上することではないだろうか。

これは一見非常識なことに見えるが、いつの時代にも通用する「小よく大を制する」着眼点なのかもしれない。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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