新市場開発の極意 -アロマ市場の パイオニアS社

経営

西浦道明のメルマガ 2014年2月

S社は、今や3000億円市場になるアロマ(植物から抽出された精油)市場のパイオニアであると言っても過言ではない。

1979年にハーブ(私たちの暮らしに役立つ植物の総称)事業を立ち上げたが、まだほとんどの日本人が「ハーブ」という言葉も知らない頃であった。

ハーブとは何か、海外へ出向いて調査するところから始め、その歴史、文化、生活のなかでどのように扱われてきたかを元に、四半世紀という長い年月を掛けて、ハーブを日本に紹介し、市場を育てたのだ。

まずモノの面では、世界40カ国にある農園と提携して、彼らからハーブや精油を直輸入するに至っている。
これで調達面が確保され、モノの安定供給に成功した。

また、ハーブの用途開発、商品開発をしながら、そのひとつずつを楽しみ方として提案することにより、ハーブのある生活を提案してきた。

コト消費に対する地道な積み重ねの結果、今や自社開発商品2500、直営店舗120店になっている。

次にヒトの面だが、自社のみならず市場全体として育成すべく、1996年には協会を設立して、アドバイザーやインストラクターの育成を始めた。

アロマ検定の有資格者は今や30万人にも上り、市場の育成に大きく寄与している。

ちなみに、社員の大半が「元お客様」であり、長い時間を掛けて市場を育ててきた成果は、お客様、インストラクター、社員となって、自社にしっかり還流している。

こうして育てた豊富な人材がいるからこそ、直営のアンテナショップにおいて、モノ販売のみならず、コト販売が実践されている。

スクール・セミナーを運営したり、講師派遣ができるのも、この人材育成のお蔭なのだ。

このように、業界そのものを長時間掛けて熟成させてきた成果は大きい。

「モノの確保」と「ヒトの育成」という形を通して、業界にしっかり根を下ろしている。

(1)小売店・スパ・エステティックサロン・専門学校などへの卸売り、(2)ハーブ専門店開業支援、(3)運営管理・商品開発・店舗開発・イベント計画・新事業開発のコンサルティングという事業は、このような深い経験があるからこそ展開できるものではないだろうか。

市場への影響力は実に大きく、S社は、今やこの市場では不動の地位にある。

こう見てくると、全くの新規事業分野に進出して、そこで「池のクジラ(ニッチトップ)」になるには、「ヒトの育成」と「モノの確保」、そして、ヒトが育つからこそはじめてできるのだが、徹底した「コトづくり」が重要であることに気づく。

企業は「価値創造業」であり、「顧客の創造」であるとつくづく思う。

そして、そのベースに人の成長が不可欠なのだ。

S社は、「企業は人の成長に応じて成長する」の、まさに好事例ではないだろうか。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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