下請から自社ブランド製品への大転換 -下請メーカーM社

経営

西浦道明のメルマガ 2013年10月

下請メーカーM社は、18年間で売上を10数倍、利益を100倍以上に拡大させた。

創業105年の歴史は、商社時代が38年、下請メーカー時代が49年、そして、M社長が入社し、自社ブランド製品メーカーとなって18年が経つ。

自社ブランド製品を開発し、新規販路開拓に成功し、自社小売店網70ヵ店を築き上げた。

それでは、M社長に、なぜ、これができたのだろうか。
その理由を、彼の辿ったプロセスを確認しながら探りたい。

M社長が入社二年目にして行ったことの一つは、自分が入社する前87年間の蓄積であった石鹸製造の技術・品質管理・製法の中の強みへの着眼であった。

当時、父親は廃業も視野に入れており、当初、入社に反対した。
それにもかかわらず、M社長はあえて実家に戻り、当社に入社したのだ。

そして、社員が誇りに思っていた自社の石鹸製造方法と、M社が下請時代に自然と身についていた自社技術に着眼したのだ。

二つ目は、自社ブランド製品の製造販売への転換である。

デザイナーにブランドマークを依頼し、6アイテムを自社ブランド製品として製造した。

委託先メーカーに「取引を切るぞ」と脅されもしたが、これに屈せず決断した。
そして、新規販路開拓に立ち向かったのだ。

都内有名雑貨店の、購買権を持つ店頭販売員・フロアマネージャーの方たちから共感を得た。
相手から共感を得るプル型の営業活動なら、長い関係が構築できると考えたのだ。

三つ目は、元々ヨーロッパ人の知恵が生み出した、ボタニカル・スキンケア商品の小売店舗70ヵ店を創り上げたことである。

海外留学経験や、商社経験から、いち早く世界の時流を読み取り、果敢に進出して、チャンスの前髪を掴んだのだ。

今では、これが売上全体の70%を占めるに至っている。

四つ目は、M社の価値観を創り上げ、これを社内で共有したことである。

基本はマーケット・インである。
お客様の目線で、一つひとつ丁寧に製品を作ることを大切にした。

お客様が実際に使ってみて感じたこと、これが、製品価値だとM社長は考えた。
「ご縁があり、製品を手にとって良かったと感じてもらう、そのときを待つ」。

そうした決して慌てないスピード感で、会社を運営していくのがM社長のポリシーなのだ。

そして最後の五つ目は、「社員力」を高めたことである。

入社希望者全員と自ら採用面接して、自分が社員だったら経営者にして欲しいと思うことを、自分が経営者として社員にする。

また、命令するのではなく質問する。

去年と違う新しいことをやるという限り、失敗してもマイナスとは思わない社内ルールを制定したのである。

M社長は、父親すら諦めていた下請からの脱却を、見事に果たした。
自社に潜む、強みを見出したのがきっかけだった。

そして、自社ブランド製品を開発し、新規販路を開拓したところで、大きな節目を乗り越えた。

成功要因を一言で言えば、「覚悟と執念」の強さ以外の何ものでもなかった。
経営とは、所詮、人間的なマターなのだ。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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