データサイエンスによるDXは、中堅中小企業の成長の武器となるのか?

経営

データサイエンスという言葉自体はお聞きになられたことがある方が多いのではないでしょうか?

一橋大学が2023年4月に約70年ぶりの新学部となるソーシャル・データサイエンス学部を新設するというニュースに代表されるように、データサイエンスの経済活動の中での重要性は大きくなっているのを感じます。一方で、「また、一時の流行り言葉の一つでしょ」「データサイエンスなんて抽象的で何かよくわからない」「データサイエンスはまだまだ大企業向け」「中堅中小企業にビッグデータは無い」といった言葉が聞こえてきそうなキーワードでもあります。

本稿では、データサイエンスとは何か、中堅中小企業の成長の武器となり得るのか、という観点で解説します。

企業活動におけるデータサイエンスとは何か?

企業活動におけるデータサイエンスは、3つのプロセスで説明することができます。

①ビジネスに存在する課題を把握し
 ↓
②課題に対してデータ解析を行い
 ↓
③効果的な解析方法を継続的に利用可能な形に変えていく

こう聞くと、どの企業も大なり小なり実施されているものと感じられるのではないでしょうか。

3つのプロセスに製造業の例をはめて理解を深めてみましょう。

プロセス①:ビジネスに存在する課題を把握

(例)
製造部門のヒトの生産性の向上

プロセス②:課題に対してデータ解析を行う

(例)
時間あたりの生産性を、ライン別・工程別・班別に解析した結果、リーダーA氏が関与しているラインは生産性が平均30%高いことが判明。
高い生産性を示すデータに対して定性的に原因の掘り下げを行ったところ、業務段取りの指示方法がポイントであることが判明し、他の班にも手法を横展開。

プロセス③:効果的な解析方法を継続的に利用可能な形に変えていく

(例)
プロセス②のデータ解析結果を、日次で自動取得、製造現場のモニターに表示し、継続的な改善PDCAを推進。

ビッグデータを扱っていなければデータサイエンスではないと言う方もいるかもしれませんが、データサイエンスの本質は上記3つのプロセスで企業の課題解決が推進されていることです
 

データサイエンスは中堅中小企業の成長の武器となり得るのか?

故稲盛和夫さんの稲盛会計学の有名な言葉として、以下があります。

会計の数値は、飛行機のコックピットにある計器盤の数値に例えることができます。
パイロットが、高度や速度、方向などを示す計器盤の数字を見ながら、飛行機を操縦するように、経営者は会計数字を見ることで会社の実態を読み取りながら、経営の舵取りを行います。
もし、飛行機の“計器盤”が狂っていたら、正しく飛行することができないように、会計数字がいい加減であれば、会社は誤った方向へ進んでいくことになります。
したがって、会計とは、企業経営において“羅針盤”の役割を果たすものであり、「経営の中枢」です。

この言葉は、経営改善の仕事に身を置く私自身も現場で重要性を強く実感しますし、月次決算や管理会計は企業改善の一丁目一番地であると捉えています。

データサイエンスは例えるなら、「アナログの計器盤」を「デジタルの計器盤」へ強化したものと言えます。

会計数値だけでなく、売上や利益に直結する現場の重要な2次情報(ロス率、時間当たり生産性等)を、月次と言わず日次や半日単位でリアルタイムに情報提供し、業績改善につなげている中堅中小企業が、実際増えてきています。

つまり、データサイエンスは、経営のかじ取りをする情報の「深さ」と「スピード」を高めることができるということです。

ITシステム、クラウド、IOT、RPAの技術革新に伴って、中堅中小企業でも手の届くコストで実現可能な環境に変化しています。

車、書籍、手帳も同じくですが、もちろんアナログはアナログの良さがあり、筆者は繰返し読む書籍はアナログ派でもあります。一方で、実用レベルまで来ているデジタルについては、使いどころを見極め、変化に対応していく必要があるのではないでしょうか。

売価単価と原価単価のコントロールに必須

特に直近で、データサイエンスの必要性を高く感じるのは、「値上げ」の課題に対する対応です。

原材料価格の高騰、エネルギーコストの高騰に伴い、ほぼ全ての業界で「値上げ」が重要なテーマになっています。

値上げ交渉に際して、値上げ幅に対する合理的説明を求められるため、自社の原価構造の視える化が出来ている企業、出来ていない企業では、大きく値上げのスピードと値上げ幅に差が出ています

上記では値上げを一例として出しましたが、売価単価(値決め、値上げ)と原価単価(材料、外注、人工、エネルギー、物流、経費、ロス)のコントロールは、中堅中小企業が生き残るために今後、より一層重要性が増してきます。

特に以下のような中堅中小企業は、データサイエンスの仕組みを構築し、3つのプロセスを推進することが、業績改善に寄与するものと捉えています。

  • 原価構造が複雑な製造業、建設業、サービス業等
  • 創業者の勘ピューター(経験からの合理的判断)での企業運営は難しい事業承継後の企業

アタックスグループでは、データサイエンスによるDXを中堅中小企業の成長の武器にするため、中堅中小企業の実情、会計、IT、データ解析に精通したコンサルタントが、データサイエンスの仕組づくり、仕組みづくりをとおした経営デジタル人財の育成を支援しています。お気軽にご相談ください

筆者紹介

株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 取締役
中小企業診断士 平井 啓介
業務系システムを扱う大手システムベンダーを経てアタックス入社。 システムエンジニア時代は、会計システムを中心に、中堅中小企業~上場企業まで業種を問わず、約60社の業務改革を支援。システム企画~導入・運用支援まで、プロジェクトマネジメントのみならず、現場の実態を理解したうえでのサポートを得意とする。アタックス参画後は、システムエンジニア時代に得たITスキル、ロジカルシンキングスキルを応用し、業績管理制度構築サポート、業務プロセス改革サポート(BPR)、事業再生サポートに従事。経営者、管理部門責任者の相談相手に注力している。
平井啓介の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

タイトルとURLをコピーしました