オープンイノベーション促進税制の拡充~スタートアップのM&Aも所得控除の対象へ!

税務

毎年のことですが、今月12月は税制改正大綱が閣議決定される予定です。

この時流解説を書いている今現在も、与党税制調査会でまずは与党大綱の準備がされている最中です。

同会の宮沢会長によると「昨年・一昨年は大きな改正がなかったが、今年はその分山盛りとなる」とのことであり、令和5年度は岸田政権の「新しい資本主義」を税制面で後押しする大きな改正がありそうです。

令和5年度 税制改正大鋼で注目したい改正案

その中でも重要視されており、経済産業省からの改正要望にも掲げられていたのが、スタートアップ・エコシステムや、オープンイノベーションの促進に関するものでした。

目玉になりそうな改正案は下記の通りです。

1.エンジェル税制の拡充
2.ストックオプション税制の拡充
3.オープンイノベーション促進税制の拡充

エンジェル税制の拡充

与党の税制調査会では個人投資家(エンジェル)が株式の売買で得た利益をスタートアップ企業に再投資しやすい税優遇制度を設ける調整が続いています。

売却益のうち、スタートアップへの再投資に相当する分を非課税とする方向ということですが、詳細はまだ明らかにされていません。

ストックオプション税制の拡充

税制適格ストックオプションについては権利行使時の経済的利益には課税せず譲渡時まで課税が繰延べられますが、その権利行使期間につき、付与決議から10年以内だったものを15年に拡大する方向で検討中とのことです。

これは、スタートアップ企業の創業からIPOまでの年数の中央値が12年超で推移しており、直近では14年となっていることからも、実態に即していなかった部分に対応したものと考えられます。

オープンイノベーション促進税制の拡充

筆者が個人的に注目しているのは令和2年度の税制改正で盛り込まれた「オープンイノベーション促進税制」の拡充です。

事業会社やコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)が、自社のビジネス変革やスタートアップ企業の成長への貢献などを目的とし、スタートアップ企業に対する1億円(中小企業者は1,000万円)以上の「出資による払い込み」をした場合、株式取得価額の25%が所得控除となる制度です。

当初の適用期限は令和4年3月まででしたが、令和4年税制改正において令和6年まで延長され、スタートアップ企業設立後の年数要件も(一定の要件を満たした場合ではありますが)15年に延長されました。

事業会社の出資要件となっていた株式保有期間も5年以上→3年以上に短縮しています。

令和4年税制改正後の現行制度において課題となっているのは、対象となるのが新規発行株式に対する払い込みのみで、既存発行株式は対象外となっており、実質的にM&Aには活用できない制度となっている部分でしたが、今回の拡充ではM&Aも対象となる見込みです。
 

スタートアップの出口戦略M&Aも対象に

日本のスタートアップの出口は、IPOが大半を占め、もう一つの出口であるM&Aは僅か24%パーセントと限定的です。

上場によって調達できる資金も欧米に比較して小さく、上場後の成長が鈍化する傾向が見られます。

また、新興市場であるマザーズ上場企業のうち、約9割が公募増資・第三者割当増資を一度も行っていません。

上場後は、四半期の利益を追う必要に迫られ、減価償却費などの増加で利益が小さくなってしまうような投資が難しくなること、また、日本では債務超過が問題視される風潮があり、赤字を「掘る」ような大きな投資が抑制されてしまう環境であることに加え、公募増資ルールとして資金使途を具体的に開示する必要があり、海外のように用途を一般事業目的とした増資がそもそも困難であることなどが理由だと言われています。

経団連が9月に提出した2023年度税制改正に関する提言でも、オープンイノベーション促進税制の対象にM&A時における発行済み株式の取得を追加するよう要望が盛り込まれています。

今回の税制改正に期待すること

今回の改正がうまくいけば、これまでIPOに偏っていたスタートアップの出口戦略の多様化を促す改正となる可能性があるのです。

設立10年~15年のスタートアップ企業のM&Aが活発になれば、M&Aを実行した起業家が経営から離れ、シリアルアントレプレナーになることや、その他の領域への転身が可能となり、人材の循環がしやすくなります

また、IPO後、株式を売却することでキャッシュを得にくかった起業家が、新たにエンジェル投資家となり、スタートアップへ投資することも期待されます。

岸田文雄首相は看板政策の「新しい資本主義」で今年を「スタートアップ創出元年」と位置付け、5年間で起業を10倍に増やす考えを明らかにしています。

まずは今月公表される税制改正大綱の内容を楽しみにしたいと思います。

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筆者紹介

株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング執行役員
税理士 浦井 耕
TFP(現山田)コンサルティンググループ、中小会計事務所を経て株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティングへ入社。ハンズオンによる管理制度構築支援や多数の企業再生支援に従事。2011年の東日本大震災以降は特に宮城県内の被災企業の再生支援を多く手掛ける。
浦井 耕の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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