交際費等「限度額引き上げ」の実務~令和6年度税制改正

税務

令和6年度税制改正で、飲食に関わる交際費について改正がありました。
参考:財務省HP「令和6年度税制改正」(令和6年3月発行)

従来、1人当たりの飲食代で交際費(損金不算入)に含めなくてもよい金額基準が、4月1日以降分より5千円から1万円に引き上げられました。

実務上では、社内の規定や管理体制にも多少影響があると思われます。

1.交際費の概要

①定義

法人税法上の交際費とは、「交際費、接待費、機密費その他の費用において、法人が、得意先、仕入先その他事業に関係のある者などに対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」と規定されます。

事業に関係のある者とは、直接の取引関係にある者だけではなく、間接的に利害関係のある者(法人の役員、従業員、株主等)も含まれます。

②課税(限度額)

交際費は、原則的には損金になりません。

ただし資本金1億円以下の中小会社(一部適用できない会社あり)では、8百万円までは損金に算入することができます。

2.飲食費に関する交際費の規定

①損金に算入できる飲食費

交際費に該当する飲食代であっても、社外の者との飲食費(社外交際費)で1人あたり1万円(改正前:5千円)以下であれば限度額とは関係なく損金となります。

これは上記の企業規模による区分はありません。

飲食費のなかには、飲食代、それに伴うサービス料・お土産代、弁当代等が該当し、ゴルフや観劇等の催事に際しての飲食代や、送迎費、飲食物の贈答は該当しません。

また社内の者との飲食代もこの規定の対象とはなりません(会議費とするかは別の問題)。

②帳簿要件

上記は、帳簿等に以下の記載がないと認められません(従前と同じ)。

・飲食のあった年月日
・参加した相手の氏名または名称及びその関係
・参加人数
・飲食費の金額と飲食店の名称及び住所
・その他参考となる事項

実務では、領収書に上記(人数、相手先等)を記載し保存するか、交際費申請書等をつくり対応をします。

3.実務上の注意事項

①規定の再検討

実務では、現場の判断で支出できる接待の飲食費の金額基準を、(税法に合わせて)1人当たり5千円までと規定しているところも多くあります。

今回の改正で、会社の取り得る金額の選択も広がりましたので、現場の実情を踏まえ、妥当な基準額を設定すべきと考えます。

また、この規定は社外の者との飲食に限られているため、社内の会議費とは異なります。

会議費は会議の実態の有無が前提となり、それに適したところでの費用負担が損金算入できるものなので、単純な金額基準ではないことにご留意ください。

②経理処理

社外の者との飲食費は交際費から除外できる(損金算入できる)ので、経理処理をするときに他の交際費と区分しておく必要があります。

交際費勘定内で枝番号等を設定し別管理する方法や、交際費とは別の勘定科目を設定(例:接待飲食費、交際費2等)する方法があります。

ここらは従前と同じ処理方法でよいと思います。

③税務調査対応

調査では、「飲食費に関する交際費の規定の帳簿要件」が満たされているかどうかを確認します。

特に人数を水増しして、1人当たりの単価を5千円以内(4月以降分は1万円以内)としているケースもあるので、必要に応じてお店に反面調査を行い、参加人数チェックを行います。

またレシート等により飲食内容に疑義(例:お子さま用の飲食等)がある場合、社長の自宅近くの飲食店では、事業との関係性を疑われることがあります。

この点は説明できるようにしておくことが重要です。

筆者紹介

アタックス税理士法人 代表社員 税理士 愛知 吉隆
1962年生まれ。中堅中小企業から上場企業に至るまで、約800社の税務顧問先の業務執行責任者として、税務対応のみならず、事業承継や後継者支援、企業の成長支援等の課題や社長の悩みに積極的に携わっている。
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