海外資産にまつわる税務~最近の動向を踏まえて~

税務

平成24年11月、国税庁から「平成23事務年度における相続税の調査状況について」が公表されました。

この資料には「海外資産関連事案に係る調査事績」ということで、海外資産に関する相続調査についての記載があり、これによりますと、海外資産に関する調査対象件数は前年に比べて46件増加し6.6%増となっており、このうち海外資産の申告漏れなど問題があるとされた件数は若干減少したものの、重加算税の対象とされた件数は3件増加し17.6%増、また問題があるとされた事案1件あたりの金額は1,431万円増加し6,478万円となっています。

なお参考までに、名古屋国税局管内では、調査対象件数は前年に比べ22件増加し23.2%増、問題があるとされた事案1件あたりの金額は2,970万円増加し8,774万円となっています。

金額が大きくなっている海外資産に対して税務当局が積極的に調査を実施、海外資産の把握に努めているという傾向が見受けられます。

このような税務調査での把握以外に、海外資産を把握する方法として、「国外送金等調書制度」というものが従来よりあります。

この制度は、1件あたり100万円超の国外への送金や国外からの入金がある場合、取り扱った金融機関が直接、税務署に送金者や金額、口座番号などを記載した書類を提出するというもので、税務署は提出されたこの書類について疑義などがある場合に「国外送金等に関するお尋ね」を本人に送付、そのお尋ねの回答も参考にして海外資産の把握をしているようです。なお、このお尋ねの回答や対応によっては税務調査に発展する場合もあります。

このような制度に加え、平成24年税制改正で「国外財産調書制度」が創設されました。この制度は、平成25年12月31日以降、毎年12月31日に海外資産の合計が5,000万円を超える場合、その明細を記載した書類を税務署に提出するというもので、この書類の提出が無く海外資産に関する不動産所得などの申告漏れが判明した場合、罰金である加算税を5%上乗せするという規定が設けられており、この書類を提出しなかった場合や虚偽の記載をした場合には、1年以内の懲役または50万円未満の罰金を課するという規定も設けられています。

このような罰則規定が設けられたことからも、税務当局が海外資産に重点を置き始めていることが窺えます。所得が2,000万円超となる場合に確定申告書に添付することとなっている「財産及び債務の明細書」とは大違いです。

税務当局は、“当然、海外資産を持っている”という前提にたち始め、海外資産については漏れなく把握するよう、厳しい手続きや体制を作ってきています。また現在、税制調査会では、「国外に居住する相続人等に対する相続税・贈与税の課税の適正化」を図るという目的で、海外資産を利用した租税回避事例への対応を税制改正に盛り込むことも検討しているようです。

このような海外資産に対する税務の動きを把握した上でしっかりと対応する、ということが今後ますます重要になってくると思います。

筆者紹介

アタックス税理士法人 社員 税理士 村井 克行
1987年 南山大学卒。「会計税務の知の集結と事例の体系化」を確立すべく立ち上げた「ナレッジセンター室長」を務めた後、現在は、組織再編や相続対策など、最新の税法・会社法の知識を生かした永続企業のための総合的な支援業務に従事。誠実で緻密な仕事ぶりは多くのオーナー経営者から高い評価を得ている。
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