「年上の部下」に悩む若き管理者急増中!~高齢者キャリア考

高齢者雇用 人材育成

「私の一番の悩みは、年上の部下への接し方なんです」
最近、講座に参加する若き管理者からこのような悩みを打ち明けられます。
そしてその数が、年々増えてきているように感じます。

それもそのはず。

日本は、労働力人口減少の対抗策として、高年齢者雇用安定化法の改正により高齢者雇用を促進してきました。

2013年の法改正では、定年退職後の希望者全員の65才までの雇用が企業に義務づけられています。その成果もあって、今では60才代前半の就業率は、60%を優に超えています。

この傾向は、年金支給年齢が段階的に引き上げられ、収入を得る必要性が増している高齢者、人材採用が難しくなるなかで人手を確保したい企業、双方にとってWin-Winであることは間違いありません。

しかし一方で、冒頭のような現場レベルの問題が発生しています。

今後も高齢者雇用の促進が避けられない以上、企業は高齢者雇用の在り方について、改めてその運用を見直す必要があると思います。

その前に、60才までに培ってきたスキルや経験値が、それ以降も通用する人材とはどういう人材なのかを考えてみたいと思います。

1.特別な顧客人脈を持っている
2.業界の顔として影響力がある
3.伝承すべき高度な技能を持っている
4.マネージャー・経営者としての実績と手腕がある

これらのいずれかを保有している人材であれば、60才以降も企業内で十分活躍することができるでしょう。

これらの人のことを、「雇われる能力(エンプロイヤビリティー)のある人」といいますが、しかし、その数は、ほんの一握りに過ぎません。

以前は、そこを会社が選別して再雇用できました。しかし現在は、特別の事情を除いて希望する人すべてを再雇用する義務があります。

企業は、そこを十分に斟酌せずに画一的に高齢者を受け入れている場合がほとんどです。これが、若き管理者を悩ませています。

今後企業がすべきことは、これからも続く高齢者雇用について、もっと積極的に「戦力化のための策を講じる」ことです。

そして更に、「高齢者雇用」は社長の仕事ととらえ、積極的に関わっていくことが大切です。

「戦力化のための策」については、いかに早い時期から、社員の雇われる能力(エンプロイヤビリティー)を高めていくかが課題です。60才近くになって60才以降の事を考えていては遅すぎるからです。

そのためには、もっと若い年代から「仕事人生」を考える機会を設けることが必要です。最近よく相談を受ける「キャリア教育」等がそれにあたります。

ある企業では、入社5年目、入社8年目に、「キャリア形成セミナー」を社内開催しています。 そのセミナーでは、会社の人事制度の理解とキャリアに関する基礎講座、人事部門の個別面談をセットで行っています。

仕事人生が長期化するなかで、主体的に仕事人生を考える機会をわざわざ就業時間内に設けているのです。これは大変意味のあることだと思います。

次に、40代前後になってくると、管理者として組織のマネジメントを志向するか、プレーヤーとして今の仕事を深掘りしていくかの分岐点が来ます。

その年代においても、その後約25年近く続く仕事人生をどのように組み立てるかを考えさせることが必要です。場合によっては新たな能力の再開発を行い、人材としての価値を維持向上するための支援をすることが有効です。

そして、いよいよ再雇用を迎えるという社員には、社長から直接期待を伝えることが何よりも重要です。

1.「継続雇用」の考え方を伝える
2.貢献して欲しいことは何かを伝える
3.評価は何に重きを置くのか伝える
4.報酬をどのように決定するのか伝える

これらを、社長自ら長年の功労者である再雇用者に伝え、腹落ちさせるのです。

高齢者のマネジメントを若き管理者に任せきりにするのではなく、社長や人事部門の役員が、「高齢者の働き方」に責任を持つ覚悟が必要です。

高齢者が、60才を超えてもいきいきと活躍でき、若き管理者のもとで、持てる能力を存分に発揮できるような環境整備を、キャリア形成の視点で取り組んでいく。

これこそが、高齢化が進む日本の企業にとって、最も重要な人材戦略といえます。

株式会社アタックス・ヒューマン・コンサルティングでは、高齢者雇用を最適化する賃金カーブの見直し、キャリア教育含めた教育体系の構築等について、親身に対応させて頂きます。こちらからお気軽にご相談ください。

また、コラム筆者のセミナーを12月に開催します。
【社員育成戦略セミナー】
東 京:12/6(火)13:30~15:30
名古屋:12/5(月)13:30~15:30
是非ともご参加ください。

筆者紹介

株式会社アタックス 執行役員 中小企業診断士 北村 信貴子
1963年生まれ。中小企業診断士、産業カウンセラー、BCS認定ビジネスコーチ。大手食品メーカー勤務後、アタックス入社。中堅中小企業を対象に経営診断や人事制度設計運用・人材育成業務に従事。現在は、後継者育成、管理者教育、女性リーダー育成を中心に実践型の教育訓練・能力開発に特に注力。講演・セミナー実績多数。受講者との対話を通じて理解を深めていく迫力ある指導には定評がある。
北村信貴子の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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