日本人の心“おもてなし”はビジネスで通用するのか!

“おもてなし”は、2013年の流行語大賞後、もてはやされました。その当時からすると下火ではありますが、東京オリンピック開催に向け、再び官民共に、この言葉を標榜する傾向にあります。

“おもてなし”に関しては、デービット・アトキンソン氏が著書で、観光客誘致の主要因にはならないと主張していますが、今回は“おもてなし”のビジネスとしての問題点について述べたいと思います。

“おもてなし”とは、一般的には「対価を求めない、自発的な他人への心配り」で「相手から言われる前に、相手の心を察して、相手の希望する(場合によってはそれを上回るような感動的な)行動をとる」ことといわれています。

一説では、茶道における「一期一会」には、人との出会いを大切にし、その時間、(お互いに)相手に対して最善を尽くす、の意味があり、そこには主従関係はなく、対価も発生しないという、“おもてなし”の原型が見て取れます。

つまり“おもてなし”は、提供者だけでは成り立たず、「一期一会」の場をお互いに最高の時間になるようにしよう、という受け手の感性も大切です。主従関係のない相互信頼・尊重の元に成り立っているのです。

これ自体は素晴らしい文化ですが、ビジネスとして考えれば、商品・サービスの出来栄えでなく、売手に呼応してくれる寛大な顧客の存在が前提になってしまいます。 古くから似通った環境の中で培われた文化に育った日本人同士であれば、ある程度、慮ったり、“忖度”したりすることも可能でしょう。

しかし、色々な文化背景を持つ外国人や、多様化する価値観を持ち始めた日本人に、果たしてこの文化背景を理解してもらえるのでしょうか?

日本人は言わずもがなで行ってくれるサービスを高く評価します。一方、海外(特に西洋)では、何をしてもらいたいのか、何をするのかを明確に示す傾向が強いようです。

日本と異なり、相手のことを理解できなかったり、相手の個性を尊重することを前提にしているからかもしれません。
これらを踏まえて、“おもてなし”についてビジネスに照らして点検して頂きたいのが、次の2点です。

◆その“おもてなし”本当に付加価値を生んでいますか?
上述の通り、おもてなしは相手の思いを先読みして動くこと。互いに通じ合っている者同士でなければ、おもてなしに価値を感じてもらえません。

◆その“おもてなし”ちゃんとビジネスになっていますか?
おもてなしの原型は無償とはいえ、事業としてやる以上、何らかのリターンに結びつく必要があります。仮に付加価値を生んでいるのであれば、しっかりとビジネスとしてのリターンを考えるべきです。その付加価値を無償で(or安く)提供することで、他の売上に繋がっているのか、または付加価値に見合った価格設定が許容されるのか。

日本では、無対価の心遣いである“おもてなし”と、“お客様は神様です”の三波春夫の名言に対する誤解とが相まって、お客様の言うことは何でも無償で言うことを聞く、と言う変な慣習が生まれたように思います。

多くの外国人が訪れる東京オリンピックは、おもてなしやサービスは無料が当たり前と思いがちな日本の風習を変えるチャンスかもしれません。 “おもてなし”は世界に理解してもらうべき素晴らしい日本の文化だと思います。
しかし、ことビジネスにおいては、きちんと対価の取れない“おもてなし”は止めるべきです。

では、どんな“おもてなし”が必要なのか。 古今参考になるものがありそうです。

最近の研究(「おもてなし幻想」実業之日本社)によると、“感動的なサービス”は顧客のロイヤルティには殆ど影響を与えず、ロイヤルティ向上には“顧客に手間をかけさせないこと”が最も重要、とのことです。

“お客様に感動を!”と力むことなく、当たり前のことをしっかりと行う方が大切なのかもしれません。

利休は茶道の心として“利休七則”を残しています。

一 茶は服のよきように点て
二 炭は湯の沸くように置き
三 花は野にあるように生け
四 夏は涼しく冬暖かに
五 刻限は早めに
六 降らずとも傘の用意
七 相客に心せよ

個々の説明は割愛しますが、いずれも相手が不自由や不便さを感じず、リラックスする小さな心配りの大切さを説いています。大きな感動を狙ったものではありません。

奇をてらったり、感動を呼び起こすようなことでなく、当たり前のことをしっかりやり遂げることが真に必要なことです。

それ以上のことをするならしっかり対価をもらう、という基準で、“おもてなし”(サービス)を見直すことが大切ではないでしょうか。

筆者紹介

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株式会社アタックス 執行役員 金融ソリューション室 室長 松野 賢一
1990年 東京大学卒。大手都市銀行において中小中堅企業取引先に対する金融面での課題解決、銀行グループの資本調達・各種管理体制の構築、公的金融機関・中央官庁への出向等を経て、アタックスに参画。現在は、金融ソリューション室室長として、金融・財務戦略面での中堅中小企業の指導にあたっている。
松野賢一の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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