DXとは?~最先端から考える中小企業のIT戦略(1)【全3回】

ITの話となると概念や横文字ばかりで難解ですが、今回はその中でも、特に経営者の皆様方におさえて頂きたい内容に絞り、ポイントを整理しました。

構成は以下の通りです。
お忙しい方は、各章末のまとめだけお読みください。

<目次>

【第1回】時代の潮流
人口動態の変化と人手不足
求められる生産性向上
大企業と中小企業の生産性格差
大企業の平均以上の生産性を誇る中小企業の特徴
まとめ

【第2回】ポストモダンERP
・ERPとは?
・ポストモダンERPとは? ~つながる・ひろがる~
・ポストモダンERPの便益
・まとめ

【第3回】デジタルトランスフォーメーション(DX)
・DXとは? ~デジタル化とデジタル変革の違い~
・中小企業のDX ~失敗リスクを最小化するための要諦~
・まとめ

今回は第1回の内容をお伝えします。
最後までお付き合いください。

———————————————-

【第1回】時代の潮流

———————————————-

人口動態の変化と人手不足

日本社会の高齢化と人口減が急速に進行しています。
そのため、需要減だけでなく深刻な人手不足が常態化しています。

直近の有効求人倍率は約1.6です。(*1)


(*1)出典 厚生労働省「一般職業紹介状況」
一般職業紹介状況(令和元年12月分及び令和元年分)について
図1 完全失業率、有効求人倍率

有効求人倍率が1を超える状態とは、仕事を探している人よりも、人を探している企業の方が多い状態です。
過去70年間の中でも最高水準となっています。

求められる生産性向上

会社は「人」と「仕組み」で成り立っています。
そのため、会社を強化しようとする場合、「人」を強化するか、「仕組み」を強化するか、どちらかしかありません。

では、まず「人」の強化を考えてみましょう。
取り得る選択肢は2つです。

・採用を強化し、新規に人を増やす
・既存の社員への教育を強化し、レベルアップを図る

のどちらかです。

どちらも必要不可欠なのですが、採用難や社員が高齢化している状況では、長期視点ではいずれも得策とは言えません。

続いて、「仕組み」の強化について考えてみましょう。

誰がやっても同じ結果が得られるようにしたり、過去の成功事例を再現したりする、いわゆる仕事の標準化・マニュアル化が挙げられます。

しかし、それだけでは期待した生産性向上は実現できません。

なぜなら、仕組みを構築した熱量の高いうちは良いのですが、人の入れ替わりや時間の経過とともにバラツキが出たり、不確実性が高くなるからです。

人の注意力に依存するようなモデルでは、長い目で見ると脆いのです。

ではどうすればよいか?

人の注意力に依存しない仕組みの強化、すなわち、「ITを活用」した仕組みの強化、これしか選択肢はありません。

大企業と中小企業の生産性格差

企業の生産性を「従業員1人あたりの付加価値額」として見た場合、大企業の水準は中小企業の2倍以上です。(*2)

中小企業のライフサイクルと生産性の関係
(*2)従業員1人あたりの付加価値額(出典 財務省「法人企業統計年報」)
製造業 大企業:1,320万円/人、中小企業549万円/人
非製造業 大企業:1,327万円/人、中小企業558万円/人

その格差は年々開いていく傾向にあります。

さらにもう1つ興味深い指標があります。
全体投資にIT投資が占める割合を示す「ソフトウェア投資比率」です。

こちらも、大企業の水準は中小企業の2倍以上となっています。(*3)

中小企業の設備投資の動向
(*3)ソフトウェア投資比率(出典 財務省「法人企業統計年報」)
大企業:10.3%、中小企業:5.0%

大企業の平均以上の生産性を誇る中小企業の特徴

「人も資本もリソース面で不利な中小企業が、生産性では大企業に敵わないのは当然だ」
ここまでのお話で、多くの方がそう思われたことでしょう。

しかし、そんなことはありません。
中小企業の中でも、大企業の平均以上の生産性を誇る企業が存在するのです。

中小企業庁の統計データによれば、中小企業の中でも、実に製造業では上位10%、非製造業では上位30%の企業が、大企業の平均以上の生産性を誇っています。

【労働生産性の累積分布】
労働生産性の累積分布

生産性が大企業の平均以上の中小企業と、そうでない中小企業には、財務データにも顕著な差が表れています。

それは、「積極的にIT投資をしているか否か」、これに尽きます。

小売業の統計データを例に見ていきます。
年間の情報処理通信費の平均額は、大企業の平均以上の中小企業では34.6百万円、そうでない中小企業では17.4百万円と、実に2倍の格差があるのです。(*4)

ちなみにもうひとつ、差が顕著なデータがあります。
年間の1人あたり人件費の平均額です。

同様に小売業ですが、大企業の平均以上の中小企業では5.1百万円、そうでない中小企業では2.4百万円と、こちらは2倍以上の格差があります。(*5)

この事実について、私はこう考えます。

IT投資を進めると、業務効率化が実現

↓ そして

各人が付加価値の高い業務に専念することで、1人あたりの付加価値額が向上

↓ その結果

企業の収益性が向上し、1人あたりの人件費(=もらう側から見ると給与)が向上といった、好循環が生まれていると推察できます。

(*4)出典 中小企業庁「スマートSME研究会中間論点整理概要」P6 図4
(*5)出典 同上

まとめ

会社を強化しようとする場合、構成要素である「人」か「仕組み」、どちらかを強化するしか選択肢はありません。

この点、昨今の潮流からは、「人」に期待できない以上、「仕組み」を強化するしかありません。

さらに「仕組み」といっても、人の注意力に依存しないモデル、すなわち「ITを活用」した仕組みの強化が重要です。

大企業の平均以上の生産性を誇る中小企業が、「IT投資に積極的」という特徴は注目に値します。

言うまでもありませんが、ITは単なるツールではなく、経営そのものです。

経営者のITに対する感度が、企業の生産性格差に直結し、ひいては競争力に大きく影響します。

IT戦略の巧拙が、企業の存続を左右するといっても過言ではありません。

今回は昨今の時代の潮流を、統計データを交えて解説しました。

第2回は、「ITを活用」した仕組みの強化として、「何を」すべきなのか、whatの部分を解説します。
トレンドの話を交え、実務的な内容まで深堀します。

さらに第3回は、「どのように」進めるべきなのか、howの部分を解説します。
失敗リスクを最小化するIT投資の順序について言及し、同様に実務的な内容まで深堀します。

筆者紹介

株式会社アタックス・エッジ・コンサルティング 代表取締役 公認会計士 酒井悟史

株式会社アタックス・エッジ・コンサルティング 代表取締役 公認会計士
酒井 悟史
慶應義塾大学経済学部卒。2014年アタックス税理士法人に参画し、主に上場中堅企業の法人税務業務に従事。2019年株式会社アタックス・エッジ・コンサルティングの代表取締役に就任。現在はクラウド会計や開発システムの導入を通じ、中堅中小企業および会計事務所のイノベーション促進に取り組んでいる。
酒井悟史の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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